ツッコミ不可避なファミコンの「キャラゲー」 主人公の奇行にドン引き?
マグミクス / 2023年10月17日 21時10分
■開発陣にツッコみたくなる「謎仕様」なキャラゲー
オリジナル作品ではなく、マンガやアニメといった特定の版権を活用して作られた「キャラクターゲーム」(以下、キャラゲー)は、ビデオゲームの歴史を語る上で欠かせないジャンルです。昨今のキャラゲーはゲームハードの性能や開発陣の技術力が高いこともあり、原作の世界観を丁寧に再現した作品も多々見受けられます。
しかし、1980年代のファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)市場の頃は話が別でした。当時のキャラゲーは全体的に「ゲームバランスが不安定」「原作にあまり基づいていない」など、作品としてのクオリティが低い傾向にあったからです(もちろんすべてのキャラゲーに当てはまるわけではありませんが……)。
ファミコン時代のキャラゲーはどのような代物だったのか。今回はマンガ&アニメをベースとしながらも、さまざまな点でツッコミどころ満載だったファミコンのキャラゲーを振り返ります。
●『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』
1983年に連載がスタートし、累計発行部数が1億3500万部を超えるグルメマンガ『美味しんぼ』をもとに作られたファミコン用ソフト『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』(以下、究極のメニュー三本勝負)は、かなりシュールな出来栄えです。
同作はコマンド選択式のアドベンチャーゲームで、プレイヤーは主人公の「山岡士郎」を操作し、シチュエーションごとに適切な選択肢を選びつつ、各話のテーマに沿ったメニュー作りに励むことになります。なお、『究極のメニュー三本勝負』に収録されているストーリーは「味で勝負!」「もてなしの心」「究極のラーメン」の計3本です。
山岡士郎をはじめ、実父でありライバルとも言える「海原雄山」、ヒロインの「栗田ゆう子」に東西新聞社の同僚など、登場キャラクターも原作ならではの面子が揃っています。しかし全編を通してアレンジがされ過ぎているせいか、キャラゲーにおいて重要な「再現度」という点では、必ずしも良い出来とは言えません。
特筆すべきはゲームオーバーシーンでした。選択肢を間違えると、「警察官を殴って自分の骨が折れる」「食材を切り刻んで台無しにしてしまう」……などなど、原作では見られない光景が映し出されます。ゲームオーバー時の「丸まって頭を抱え込む山岡士郎」の姿も相まって、『究極のメニュー三本勝負』はシュールな「バカゲー」としての側面も持ち合わせていました。
●『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』
冒頭で述べた通り、基本的にキャラゲーは「原作をどれだけ再現できているか」という点が重要視されます。ゲームならではのアレンジを効かせる場合でも、まずは原作にしっかりと基づき、なおかつ原作ファンが喜ぶポイントを抑えることが求められます。
こうした前提を踏まえた上でご紹介したいのは、『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』(以下、CITY ADVENTURE タッチ)です。高校野球と青春ラブコメを軸に展開された人気マンガ『タッチ』を原作とした、「異世界冒険アクションゲーム」でした。
『CITY ADVENTURE タッチ』は野球が題材のゲーム作品ではなく、「パンチ(作中に登場するペット犬)の子犬を見つけるため、達也・和也・南の3人が異世界におもむく」という内容になっていました。原作で描かれた青春模様を8割ほど無視した、かなりの迷作です。
自分たちが住む町とは様子が異なった異世界にて、達也と和也は戦車やピエロを相手に肉弾戦で立ち向かいます。計10匹の子犬を助け出すという名目こそあれど、最初から最後まで、どうしても原作との相違点が目立ってしまいます(原作ではパンチの子犬は2匹のみ)。
まだ、快適に遊べるのではあれば「この方向性もアリかも?」と評価されたかもしれませんが、「南は戦闘に参加せず、敵と接触するとダメージを受けてその場で泣き崩れる」という仕様を含めてゲームシステムに不親切な部分が多く、やはり残念な仕上がりだと言わざるを得ませんでした。
■発明少年がなぜか悪夢に引きずり込まれる
●『キテレツ大百科』
ファミコン版『キテレツ大百科』は、悪夢の世界をまたにかけた冒険アクションゲームだった。画像は『キテレツ大百科 』1巻(小学館)
発明が大好きな小学生「木手英一」(以下、キテレツ)が主役で、彼が作り出したロボット「コロ助」や学校のクラスメイトを中心に話が展開するマンガ『キテレツ大百科』は、『ドラえもん』の生みの親である藤子・F・不二雄氏の原作マンガ、1988年から1996年まで約8年にわたって放送されたアニメ版も人気を博しました。
「キテレツの発明道具によって日常風景に変化が生じる」というのが、『キテレツ大百科』の各エピソードの基本的な構図です。しかし、ファミコン版は様相が異なり、「キテレツが発明した夢見鏡(ゆめみきょう)が壊れてしまい、悪夢の世界へ引きずり込まれる」という導入でゲームが始まります。
上述の通り、原作は現代と変わりない日常社会が舞台となっている反面、ファミコン版は悪夢という設定からか、とにかく異様な雰囲気が特徴です。ステージ1の時点でなぜか多数のテレビが浮遊していたり、試験管やビーカーが無作為に置かれていたりと、でたらめな作りでした。さらにゲームが進むにつれ、「富士山を背景に桜が咲き誇る天国」「ツタンカーメンの棺が壁一面に並んだピラミッド」などが出てきて、カオスさに拍車がかかります。
ファミコン版は「酵素クリーム」に「壁抜け服」など、原作でお馴染みの道具を発明する要素も織り込まれていますが、原作とはかけ離れた一種の奇妙さ、人によっては怖さすら感じさせるほどの内容です。救出した仲間がかえって足手まといになる部分も多々あるため、独自の雰囲気こそ目立つものの良作とは言えないクオリティでした。
(龍田優貴)
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