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アニメが「還暦」を迎えた『鉄人28号』 世相に合わせた作風で時代を超えた名作に

マグミクス / 2023年10月20日 7時10分

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■時代に合わせた作風で評価を得る『鉄人28号』

 本日10月20日は、人気マンガだった『鉄人28号』がTVアニメとして1963年に放送開始した日です。今年2023年で、60周年になります。元祖巨大ロボットアニメとなった本作が歩んだ道を、振り返ってみましょう。

『鉄人28号』の原作マンガの連載が開始されたのは、1956年のことでした。漫画家の横山光輝先生によって月刊誌「少年」で連載が始まります。当初は主人公である金田正太郎の少年探偵としての活躍を中心にする予定で、鉄人は単なる敵役だったそうです。

 ところが読者からの強い要望に応えて、鉄人は味方側となりました。本来なら、鉄人は敵役として溶鉱炉で溶かされるという末路となる予定だったそうです。オマージュ作品で「溶鉱炉」というキーワードが出てくることがあるのは、これが理由でした。

 こうして味方側となった鉄人ですが、後のTVアニメ主題歌にもあったように「いいも悪いもリモコン次第」という部分が良きスパイスとなって、作品を盛り上げることになります。本作のもっとも大事なアイデンティティのひとつかもしれません。

 その後、人気作となった『鉄人28号』は1959年にラジオドラマ化、1960年には実写ドラマ化されました。そして1963年にTVアニメとして放送開始されます。このTVアニメの影響は大きく、その主題歌は昭和世代なら誰もが知る名曲となりました。

 こうして日本のTVアニメ創成期にブームを巻き起こした『鉄人28号』は、アニメを語る上で外せない作品となったわけです。しかし、時代がまだ早すぎたのか後続の巨大ロボットアニメがすぐに続くことはなく、ジャンルが活性化するのは『マジンガーZ』(1972年)まで待つことになりました。

 その後に起こった巨大ロボットアニメブームの際にも『鉄人28号』の名前が出てくることは少なくなく、「元祖巨大ロボ」といった立ち位置で紹介されることになります。この鉄人がリメイクされて、当時の現代風作品となったのが1980年のことでした。当時はタイトルは『鉄人28号』のままで放送されましたが、ソフト化の折に『太陽の使者 鉄人28号』と呼ばれるようになります。

 当時は『機動戦士ガンダム』(1979年)のブームが始まった時期で、巨大ロボットアニメにもリアルな作風を求め始められたころです。そんな空気感のなか、本作は王道的展開でありながらも「1話完結」の強みで、さまざまなストーリー展開を用意した作品となりました。

 なかでも印象的だったのがメカ戦です。本来のデザインから今風にアレンジされた鉄人でしたが、派手なデザインとカラーリングの多い当時の巨大ロボたちに比べてシンプルで、縦横無尽に動かすには最適なスタイルでした。

 特に実質的なメカニック作画監督を務めた、スタジオZ5の本橋秀之さんと亀垣一さんの作画は「これぞ巨大ロボ」といった動きを見せ、当時のアニメ雑誌でも多々取り上げられるほど注目されます。その魅力に取りつかれた人も多く、歴代の作品でもっとも人気の高いシリーズとなりました。

 ちなみに、完全な余談ですが、美少年好きを「ショタコン」と呼ぶ隠語は本作の正太郎が元となっています。「ショウタロウコンプレックス」を略してショタコンです。これは雑誌「ファンロード」の読者質問コーナーで、「ロリコンの逆は何というのか?」という質問に編集部が答えたものが始まりでした。それほど本作の正太郎は、当時指折りの美少年だったのです。

■昭和だけでなく平成にも製作された『鉄人28号』

「鉄人28号 Classic Edition BOX 4」(キングレコード)

 そして『鉄人28号』のアニメ第3作となったのが、1992年から放送された『超電動ロボ 鉄人28号FX』です。この作品はリメイク作品ではなく、原作マンガのその後を描いたシリーズとなりました。

 そういった設定のため、大人となり結婚して息子もいる正太郎が登場します。もちろん相棒として、本来の鉄人も登場していました。そして本作では正太郎の息子・金田正人が主人公に変わり、新しくなった鉄人28号FXが主役ロボとなります。

『超電動ロボ 鉄人28号FX』の特筆すべき点は、第2作とは真逆に現代風に大胆なアレンジが加えられたデザインでしょう。ただ、背中に飛行用パーツとなる鉄人17号フェニックスが合体するようになりましたが、武器を持たないという鉄人のアイデンティティは継承しています。

 その反面、ライバルだったブラックオックスをリメイクした、「ブラックオックス/鉄人29号OX」は大きく変わりました。各部に砲門を備え、変形してジェットモードになるなど、かつての面影は皆無に等しくなっています。もっともブラックオックスとしては初の商品化もされ、壊されずに最後を迎えるという厚遇ぶりでした。

 このデザインが当時の子供の心をつかんだのか、オモチャの売り上げは鉄人とオックスともに良く、ヒット商品となっています。

 その後、第4作となったのが2004年に今川泰宏監督によって製作された『鉄人28号』です。それまでのリメイク作とは違い、原典であるマンガ版を再構築した作品となりました。

 原作マンガ連載時の昭和30年代の再現を重視しており、単純なロボットアニメ作品ではなく、複雑な人間ドラマを中心に描かれています。後にスタッフや作品観が同様の、劇場版『鉄人28号 白昼の残月』(2007年)が制作されました。

 そして、今のところ最後のアニメ作品となっているのが、2013年に放送が始まった『鉄人28号ガオ!』です。5分程度のミニ番組枠ですが、このアニメシリーズ史上最長の3年に渡って放送された作品でした。

 ポップな現代風の絵柄になっていますが、第1作を手掛けたエイケンとフジテレビがふたたび制作しています。内容もマンガ版の延長線上で、旧作のファンには高評価でした。全話ソフト化されていないので、視聴困難な点が残念です。

 もちろんアニメ化以外にも、2005年の実写映画や、2004年に「月刊マガジンZ」で連載された長谷川裕一先生の『鉄人28号 皇帝の紋章』といった新解釈の作品は他ジャンルにも及びます。

 TVアニメ化が5回というのは、6回の『ゲゲゲの鬼太郎』に次ぐ2番目の記録です。ほぼ10年間隔で制作されている点も、一緒でした。ひょっとしたらTVアニメとして還暦を迎えた『鉄人28号』も、2020年代に新作発表されるかもしれません。令和の時代の『鉄人28号』は、一体どんな作品になるのでしょうか。

(加々美利治)

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