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『北斗の拳』修羅の国に広まる「ラオウ伝説」とはなんだったのか 実は壮大な作り話!

マグミクス / 2024年3月19日 7時10分

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■民衆の希望だったラオウ

『北斗の拳』のいわゆる「修羅の国編」で、重要な要素として登場するのが「ラオウ伝説」です。「いつか『ラオウ』が海を渡り、救世主として修羅の国を平定する」という伝説は、修羅の国の隅々にまで知られており、ラオウ襲来に備えた「伝達の赤水」なるものまで用意されていました。「ラオウ伝説」とは果たしてなんだったのでしょうか。

「拳王」を名乗り恐怖と暴力の象徴として君臨していたラオウが、海ひとつ隔てた修羅の国では救世主として切望されていた――このキャラクター像のコペルニクス的転回は、当時の読者や視聴者に大きな衝撃を与えました。

 ラオウ伝説、それはラオウが海を渡り、3人の羅将を倒して修羅に支配された民衆を解放するという物語でした。修羅に虐げられた民衆にとっては希望の星であり、民の中には命がけで海を渡り、ラオウと面会して「この国を握り次第この海を渡ろう!!」と約束を交わしたものさえいたほどです。

在りし日のラオウ様。話の内容が実に世紀末覇者兄弟。第203話「訣別の鮮血!の巻」より

 しかし実際には、ラオウ伝説とは「カイオウ」が作り上げたホラ話に過ぎませんでした。かつて、兄カイオウが修羅の国を作り上げようとしていると聞かされたラオウは、真実を確かめるためにカイオウの元へ向かい、久々の再会を果たします。ラオウはいずれ国を奪うと宣言はしたものの、ケンシロウとの決着を付けるためにその場は引き返しました。

 このときカイオウは、自分の中にラオウへの情愛が残っていたことを自覚して、自らの体を傷つけ、その痛みで情愛を消し飛ばします。その日からカイオウはいつかラオウが戻ってくることを想定し、「ラオウ伝説とはこのオレの情愛との決別の証なのだ!」とのセリフにあるように、ラオウ伝説を自ら広め始めたのです。

 ではなぜ、わざわざラオウを救世主とする必要があったのでしょうか。修羅の国を支配するカイオウならば、国の総力を挙げてラオウと配下の軍勢を迎撃する体制を整えればいいはずです。修羅によって虐げられた民草にわざわざ希望を与える必要はありません。カイオウの行動は支離滅裂といえますが、この謎を解くヒントが存在しています。

 それは、北斗琉拳の力の源が「憎悪」である点です。

■カイオウは憎悪を必要としていた

高らかに悪を叫ぶカイオウ、いい顔してます。第196話「悪の妄獣!!の巻」より

 ラオウへの情愛を消し飛ばしたとはいえ、カイオウの心の中にはまだ憎悪が生まれたわけではありません。実際に、カイオウにとって憎むべき北斗宗家の血を引くケンシロウと遭遇した際には膨大な魔闘気を発していますが、ラオウと面会したときは魔闘気を見せてはいませんでした。

「どうすればラオウを憎むことが出来るのか」この難題に対してカイオウが出した答えは、ラオウ伝説を広めて民衆に希望を与えることだったのではないでしょうか。ラオウに対し希望を持った民衆は、自分たちを苦しめる修羅、中でも筆頭であるカイオウに対して憎悪をたぎらせます。憎悪を力とする北斗琉拳にとっては願ってもない話です。民衆の憎悪を一身に浴びることで、もともと存在していなかったラオウへの憎しみを強引に生み出し、自らの力とするのが目的だった、とすれば、「ラオウ伝説」とはカイオウによるラオウ迎撃のための下準備だったといえるのかもしれません。

 しかし修羅の国へとやってきたのはラオウではなく「ケンシロウ」でした。ラオウへの対策は練られているものの、ケンシロウ対策は何も無い状態です。北斗宗家の血を引くケンシロウが宗家の秘拳を習得すれば、カイオウにとっても不測の事態が発生しかねません。事実、カイオウに北斗琉拳を伝授したジュウケイは「カイオウを倒せるのはその秘拳のみ」と語っています。逆にいえば秘拳に目覚める前に倒してしまえば、カイオウにとってもはや何の脅威もありません。そこでカイオウは、妹を殺してヒョウを焚きつけるなど、自ら動くことになったのです。

ケンシロウ相手ならばこのとおり、血はたぎり魔闘気はダダ漏れ。第208話「戦場の凄拳!の巻」より

 カイオウにとって、ケンシロウとラオウでいえば、脅威度が高いのはおそらくラオウです。北斗琉拳の創始者であるリュウオウの血を引くカイオウにとって、宗家の血を引くケンシロウは格好の憎悪対象です。実際にケンシロウとの初戦で、カイオウは圧倒的な勝利を収めており、ケンシロウが勝利するには秘拳への目覚めが絶対条件となっていました。ラオウに対しては血が反応しないため、無理やり憎悪を生み出すために「ラオウ伝説」が必要だったのでしょう。

 最終的に、ラオウを倒したケンシロウの手によって成し遂げられる形で「ラオウ英雄伝説」は完成し、語り継がれることとなったのです。

* * *

 2024年3月19日(火)、『北斗の拳』40周年を記念しコアミックスより刊行が開始されたコミックス『新装版』の、第15巻と第16巻が発売されました。毎月20日に2冊ずつ発売される予定で、各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。

 またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、カイオウの憎悪の源とラオウとの訣別が語られる第202話「憎しみの傷跡!の巻」と第203話「訣別の鮮血!の巻」を、2024年3月19日(火)0時から同年4月1日(月)23時59分までの期間、無料で公開しています。

(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983

(早川清一朗)

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