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なぜ怪人は巨大化する? スーパー戦隊シリーズ「敵巨大化」における4パターンの足跡

マグミクス / 2024年3月16日 7時10分

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■『バトルフィーバーJ』では怪人と巨大怪人は別個体だった?

 おなじみ「スーパー戦隊」シリーズの第3作『バトルフィーバーJ』では初めて巨大ロボが登場し、以降シリーズに欠かせない要素となります。敵の怪人もまた巨大化しますが、「なぜ怪人が巨大化するのか」という設定が定着するまでには紆余曲折がありました。

 ことの始まりには、第2作『ジャッカー電撃隊』の視聴率低迷による、「スーパー戦隊」シリーズの一時休止があります。視聴率を気にせずにシリーズを復活させ、存続させる鍵こそが巨大ロボだったのです。

 そのきっかけとなったのはマーベルとコラボした『スパイダーマン』(東映版)で、同作には原作にない巨大ロボ「レオパルドン」が登場します。「レオパルドン」の玩具が思わぬヒットとなり、スポンサーである玩具会社の売上に貢献しました。

 それに目をつけた東映の吉川進プロデューサーは、視聴率の取りづらい時間帯でも、玩具の売上が上がればスポンサーは離れずシリーズが存続できると計算しました。シリーズ再開には巨大ロボの登場が不可欠だったのです。

 違和感なく巨大ロボを登場させるには、敵も同時に巨大化する必要がありました。巨大ロボが小さな怪人を倒すのは様になりませんし、いじめのように見えるからです。こうして敵の巨大化は必須要素となったものの、「なぜ巨大な敵が現れるのか」という理屈も必要になります。当初は番組ごとに、さまざまな理由づけがなされていました。

 巨大ロボをひっさげシリーズ再開の嚆矢となった『バトルフィーバーJ』では、敵の「エゴス怪人」が必殺技で倒されたあと、怪人の弟や妹である「悪魔ロボット」が、兄弟の仇を討つために「バトルフィーバーロボ」に対抗しました。つまり、巨大ロボが初登場した『バトルフィーバーJ』では、怪人と敵巨大ロボは別個体だったのです。

 第4作『電子戦隊デンジマン』の「ベーダー怪人」は、体内の細胞を自由に組み換えて自分の力で巨大化し、戦隊の「ダイデンジン」と戦います。巨大ロボの登場から2作目にして怪人そのものが巨大化し、その上に科学的説明が付与されました。

 続く第5作『太陽戦隊サンバルカン』の「機械帝国ブラックマグマ」が送り込む「機械生命体モンガー」も、前作同様に自らの意思で巨大化しました。

 ここで怪人の巨大化パターンが定着するものの、『秘密戦隊ゴレンジャー』の頃から続いていた「戦隊メンバーの合体技によるとどめ」が、とどめの一撃にならなくなります。合体技が決まったかと思うと、直後に相手の巨大化が始まるため、視聴者からしてみれば「あれ、前の戦隊よりも弱くなった?」とも見えてしまう設定でした。

■子供が無理なく納得できる巨大化への試行錯誤が始まる

講談社シリーズMOOK「スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1982 大戦隊ゴーグルV」(編:講談社)

 この矛盾を感じ取ったのか、第6作『大戦隊ゴーグルV』に登場した「暗黒科学帝国デスダーク」の送り込む「合成怪獣」は、一度戦隊に倒されたあと、巨大ロボが現れリフレッシュパワーを浴びせて再生させます。そして、蘇った合成怪獣がその巨大ロボを操縦するという流れでした。

 この『ゴーグルV』において当初、合成怪獣と敵巨大ロボは別々の個体でした。しかし毎話2体造型するのが大変だったためか、やがて巨大ロボは上半身が合成怪獣と同じで、下半身はロボットという形に落ち着きます。

 ここで「敵組織の仲間が一度倒れた怪人を再生させる」という設定が生まれました。必殺技で一度は怪人を倒していることになり、戦隊が弱体化したかのような印象を与えないことにも成功しています。

 しかし少々まどろっこしい展開だったせいか、続く第7作『科学戦隊ダイナマン』における敵「ジャシンカ帝国」の「進化獣」は、敵(この場合、ダイナマンたち)に倒されると細胞が急速に増加し「超進化獣」となって巨大化するという、「デンジマン」「サンバルカン」の設定に逆戻りしていました。

 第8作『超電子バイオマン』では、「新帝国ギア」が送り込む巨大カプセルから発射される巨大ロボ「メガジャイガン」だけが登場し、怪人はいないという珍しい設定でした。怪人が出ないぶん、敵幹部との攻防が中心に描かれました。

 怪人の巨大化に決定的な変化をもたらしたのは、第9作『電撃戦隊チェンジマン』です。「大星団ゴズマ」が送り出す「宇宙獣士」が倒れると、ひとつ目の原始生物「ギョダーイ」が光線を放ち宇宙獣士を再生、巨大化します。「ギョダーイ」には悪意がなく、ただ本能のままに活動しているだけでした。

『チェンジマン』でようやく、怪人が一度死んだ後、敵キャラによって再生巨大化する流れになります。そして、ここまででシリーズにおける敵巨大化の設定のパターンが全部、出そろいました。

 整理すると、「スーパー戦隊」シリーズにおける「敵の巨大化」は、大きく4つのパターンに分類できます。

(1)怪人と巨大ロボが別個体である
(2)怪人が自らの力、あるいは内包された能力やアイテムによって巨大化する
(3)敵組織のキャラクターの能力によって再生巨大化する
(4)怪人は登場せず巨大ロボだけが登場する

 これまでのシリーズ作品においては、戦隊や敵の設定によって、(1)から(4)のいずれかのパターンが使われているようです。また、(3)の「敵組織のキャラクターの能力によって再生巨大化」するパターンが圧倒的に多く見られました。

 第36作『特命戦隊ゴーバスターズ』は、怪人が登場しない画期的な設定と評されましたが、上記の分類のパターンでいうところの(4)に該当し、第9作『超電子バイオマン』の巨大ロボだけが登場する形式を踏襲していると分かります。

 なお、はじめて怪人が巨大化した『デンジマン』にこそ「体内の細胞を自由に組み替える」という科学設定がありましたが、その後は巨大になる科学的説明はなくなっています。第47作『王様戦隊キングオージャー』に登場した怪人「怪ジーム」も、公式サイトの説明では「50m級の巨大サイズになることもあるが、そのメカニズムは謎に包まれている」と記載されています。

 巨大化設定でユニークなのは、第20作『激走戦隊カーレンジャー』でした。敵組織「宇宙暴走族ボーゾック」のメンバーは、なぜか「芋長(いもちょう)」という和菓子屋さんの「イモヨーカン(芋羊羹)」を食べると巨大化します。その理由は「宇宙最大の謎」だそうです。

 スーパー戦隊シリーズに巨大ロボが登場する限り、怪人の巨大化という鉄板パターンは不滅で、これからも繰り返し使われることでしょう。

(LUIS FIELD)

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