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ウルトラシリーズの人気者? 2020年の刺客「ケムール人」 その謎めいた魅力とは

マグミクス / 2020年1月11日 16時20分

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■「フォッフォッフォッフォッフォ」

 1966年に放送された怪奇特撮番組『ウルトラQ』は、後に『ウルトラマン』を製作した円谷特技プロダクションの卓越した特撮技術により、お茶の間の目をくぎ付けにしました。なかでも19話「2020年の挑戦」に登場するケムール人は、その恐ろしさと秀逸なデザインから人気が高く、ウルトラシリーズ最古の宇宙人のひとりとして、今なお新作に登場し続けています。ウルトラシリーズをこよなく愛するライターの早川清一朗さんが、“2020年からの刺客”、ケムール人について語ります。

* * *

「フォッフォッフォッフォッフォ」

 これがケムール人の声ですと書くと、「それってバルタン星人の声じゃない?」とツッコミを入れてくる人がいるでしょう。

 正解です。

 実はバルタン星人もケムール人も同じ声なのです。より正確に言えば、この声は1963年に公開された特撮ホラー映画『マタンゴ』に登場するマタンゴの声であり、バルタン星人もケムール人もこの声を流用しています。

 さて、このケムール人が登場する『ウルトラQ」の第19話「2020年の挑戦」が放送されてから54年が経過し、ついに現実の2020年に到達してしまいました。

 20世紀には、近未来として「21世紀」を舞台にした作品が数多く作られています。「新世紀エヴァンゲリオン」は2015年が舞台ですし、「鉄腕アトム」が生まれるのは2003年です。ほかにも2020年を舞台にした作品といえば、大友克洋氏の『AKIRA」が代表格と言えるでしょう。

 とはいえ「2020年の挑戦」は2020年が舞台というわけではありません2020年のケムール星から地球人を誘拐するためにケムール人がやってきたというお話です。ケムール人自体、「誘拐怪人」なんて呼ばれてますからね。

 なぜケムール人が地球人を誘拐するのかと言いますと、ケムール人は肉体の改造により500年の長寿を誇っているのですが、彼らの優れた技術をもってしても肉体の衰えは補うことができず、そこで地球人の若い肉体を手に入れるために時を超え宇宙を超えてきたのだそうです。

「時間超えられるんだったら、そっち方面の技術でなんとかしてくださいよケムールさん」と言いたいところですが、そうすると話が始まらないのも痛いところです。普通に細胞をクローン培養するとか色々やり方はあると思うんですよねえ……。

 それにしても、人間の体なんて手に入れてどうするんでしょう。一説によれば若い男性を食べるらしいのですが、食べて若さを取り戻すというのも実にオカルトな話です。本当はどうやって使うつもりだったのか、少し知りたい気もします。

■恐怖を倍増していた「白黒画面」

ケムール人のスーツアクターをつとめた、俳優の古谷敏氏。ULTRAMAN ARCHIVES『ウルトラQ』Episode 19「2020年の挑戦」Blu-rayに収録(画像:円谷プロダクション)

 さて、肝心の「2020年の挑戦」ですが、はっきり言いましょう。

 これ、滅茶苦茶怖いです。特に白黒だと恐怖が倍増します。不意に現れる謎の液体。触れれば次の瞬間、その人は消えてしまう。序盤はこのようなSFサスペンス仕立てで物語が進行していきます。

 やがて姿を現したケムール人は、その伸びやかな手足でターン、ターンと跳ねるように街を駆けていきます。「フォッフォッフォッ」と余裕ありげに声を発しながらパトカーよりも速く走る姿は、ケムール人の身体能力は人類をはるかに上回る恐るべきものだと、観た人すべてが容易に理解できる秀逸な演出となっています。

 この時ケムール人のスーツアクターを務めていたのが、後にウルトラマンのスーツアクターを演じた古谷敏氏です。長身かつ細身の体形をしており、ケムール人を演じたことをきっかけにウルトラマンやケムール人をデザインした成田亨氏に抜擢されました。

初期ウルトラマンシリーズの怪獣造形で中心的役割を果たした高山良策氏が晩年に遺した「ケムール人」の怪獣人形(画像:円谷プロダクション)

 成田氏にとっても、ケムール人のデザインは会心の出来だったそうですが、実は長い間、ケムール人の体色は知られていませんでした。本放送が白黒だったためか当時撮影されたスチール(写真)も白黒のものしか残されておらず、1986年になって特撮雑誌に成田氏自身が塗装したフュギュア写真が掲載され、ようやく明らかになりました。

 2012年に放送された「総天然色 ウルトラQ』でのケムール人は、成田氏の着色をもとに藍色っぽい青色に着色されています。ただしケムール人の登場シーンは夜間なので、暗めの色のキャラクターの撮影はかなり難しかったようです。

 さて、『ウルトラQ」登場後のケムール人ですが、その印象深さとデザインの優秀さも相まって、その後のウルトラシリーズにもたびたび登場しています。『ウルトラマン』『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンX』と、昭和から平成にかけて出演を果たしたケムール人は、果たして令和でどのような姿を見せてくれるのでしょうか。今年2020年に新たなケムール人と出会えることを信じて、ここで筆を置きたいと思います。

(早川清一朗)

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