1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. 面白ネタ

大人気マンガの「実写化」熱望される「インドの天才監督」とは? 「全部やって」

マグミクス / 2024年3月30日 18時10分

写真

■「マンガっぽさ」を表現できる、稀有な才能

 人気マンガの実写版は毎年多数作られていますが、「実写化不可能」と言われ、人気ながらも長年実写化企画では手つかずの作品もあります。また、何とか実写化は実現するも、その世界観を再現しきれず賛否が巻き起こってしまったマンガもありました。

 そもそも実写化は原作のファンからは心配される要素が多いですが、近年、「この人ならいろんなマンガ実写化できそう」と期待を集めている人物がいます。それは日本人のクリエイターではなく、世界中で旋風を巻き起こした『バーフバリ』2部作(日本公開2017年)、『RRR』(日本公開2022年)などのヒット作を手掛けたことで知られ、ファンからは「創造神」と呼ばれるインドの映画監督S・S・ラージャマウリ氏です。

 日本でも絶大な人気を誇るラージャマウリ監督は、2024年3月18日に『RRR』の絶叫上映への舞台挨拶参加のために来日し、監督の名前がXでトレンド入りするほどの話題となりました。ド派手かつ丁寧で凝った演出と王道のストーリー展開で、どんな文化圏の人でも楽しめそうな一級のエンタメを作り出す監督ですが、特に日本人にウケる要素は、ラージャマウリ作品にある「マンガっぽさ」ではないでしょうか。

 実際、『RRR』の日本宣伝の中心を担った株式会社マンハッタンピープルの原悠仁氏が、映画評論サイト『BANGER!!!』のインタビューで「ラージャマウリ監督はキラーショット(見開きのようなキメ絵)を大事にしていく作り方なので、『RRR』は、マンガやアニメに慣れ親しんでいる日本の観客との親和性が高い作品と言えると思います」と答えていましたが。たしかに監督の作品はそういった場面が多いと思います。

 たとえば、『バーフバリ 伝説誕生』でのマヘンドラ・バーフバリと女戦士アヴァンティカのロマンティックな邂逅シーンや、後編『バーフバリ 王の凱旋』でのマヘンドラの父アマレンドラ・バーフバリが巨大な神輿を引っ張ってきて象の暴走を止めるシーン、アマレンドラとヒロインのデーヴァセーナが心を通わせながら弓矢を3本ずつ連射して戦う場面、マヘンドラが敵キャラのバラーラデーヴァが操る牛が引く戦車に真正面から突っ込んで互いに槍を投げ合うシーンなど、間違いなくマンガなら「見開き」「大ゴマ」になっていそうな描写が連続していました。

 さらに後の『RRR』でも、W主人公のビームとラーマが少年を救出した後に橋の下で手を取り合うシーン、ビームと動物たちがトラックから飛び出してくる場面、松明を持つラーマとホースを持つビームが対峙するシーン、終盤の「肩車バトル」など、挙げればキリがありません。

 そのほか、悪人に殺された主人公がハエに転生して戦う『マッキー』(2012年)は、設定から描写まで何もかもマンガ、アニメらしさを感じますし、『バーフバリ』の原点ともいえる歴史大作『マガディーラ 勇者転生』(2009年)も、400年の時を経て転生した男女の壮大なラブロマンス物語に「少女マンガっぽさ」を感じた人も多いようです。

 ちなみにラージャマウリ監督はGIZMODOのインタビューで、「アクションシーンを作る時には、そのシーンの中でも一番『英雄的な瞬間』を切りだしてコンセプトアートにしています」と語っていました。日本の観客が「マンガの見開きっぽい」と感じる場面が多いのも納得です。

 そして、特に2022年10月の『RRR』公開以降、ネット上で「ラージャマウリ監督に○○を実写化してほしい」という意見が一気に増え始めました。『刃牙』『ジョジョの奇妙な冒険』(特に1、2部)『魁!!男塾』『ドラゴンボール』など、過去に実写化されたもの含め男臭いジャンルを中心にさまざまな作品の実写化を熱望する声が相次いでいます。

■ラージャマウリ監督の「ルーツ」に納得?

『RRR』の「ナートゥダンス」の場面カット (C)2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

 そんな熱い支持を受けるラージャマウリ監督は、雑誌「ムービー・スター」のインタビューで、絵作りの影響の原点としてアマール・チートラ・カーター社のインドの神話コミックを挙げていたほか、『トムとジェリー』や『ライオン・キング』など大好きなアニメーション作品の影響についても言及しています。

 各シーンを撮影する前にCGで簡単に映像化する「プリビジュアライゼーション」をしっかり行っているほか、どんな荒唐無稽な場面でもこだわりを持ってしっかり映像化する執念も、ラージャマウリ作品の「2次元っぽさ」の要因でしょう。

 例えば、『RRR』の第95回アカデミー賞歌曲賞も受賞した「ナートゥダンス」の場面では、主演のNTR Jr.氏(ビーム役)とラーム・チャラン氏(ラーマ役)のダンススタイルが違うのを考慮したうえで、監督が「足を動かすタイミングや角度、高さ、さらに指の向きまでを、撮影しながら1コマ、1コマ確認した(MOVIE WALKER PRESSのインタビューより)」と語るほどのこだわりを見せていました。

 また、『RRR』序盤の「警察官のラーマが無数の群衆のなかに飛び込んで、誰も殺さずにひとりだけを逮捕して連れてくる」という驚愕のシーンは、ラージャマウリ監督が「ひとりで何千人もの人間と戦うにはどうすればいいか」をリアルに表現したいと何か月も考え、振付師のアイディアで最終的に納得してようやく撮影したとのことです。

 そんな時間も手間暇も惜しまないすさまじい熱量の創意工夫があるからこそ、世界中が熱狂するエンターテインメント作品を作り出せるわけで、もしラージャマウリ監督が日本のマンガに惚れこんで「これを映像化したい」と熱意を持って取り組んでくれるとなれば、「とてつもない作品ができるのでは」と期待が高まるのも無理はありません。

手塚治虫の『ブッダ』を愛読?

 ちなみにラージャマウリ監督が実際に好きな日本のマンガがあるかどうか調べたところ、「マンガの神様」手塚治虫先生の『ブッダ』を深く愛していることが分かりました。2023年2月25日放送の「世界ふしぎ発見!」のインド映画特集で、ラージャマウリ監督が取材された際はオフィスのデスクに『ブッダ』全巻がおいてあることが判明、さらにMOVIE WALKER PRESSのインタビューでは「10日に一度くらい手に取りますね。15ページくらい読んで泣いてしまうこともあり、深い部分で心を動かしてくれる作品です」と語っています。

 当然ながら仏教の開祖ブッダの生涯を描いた同作の舞台はインドであり、ジャンルとしてもラージャマウリ監督が得意とする歴史巨編です。さらに、カースト外の最下層の賎民バリアであるオリジナルキャラ、タッタが幼少期に精神を動物たちに乗り移らせる超現実的場面や、ブッダへの愛憎入り乱れる弟子ダイバダッタの人物像、大国同士の戦争など、ラージャマウリ作品を連想させる要素も多いです。

「日本のマンガ作品をラージャマウリ監督が実写化する」という出来事が本当に起こるのか? 次回作は『RRR』の続編という噂もあり、現時点では何の確証もありませんが、手塚治虫作品を筆頭に、監督を本気にさせるであろう名作・大作は日本のマンガ界に数多く存在します。そんな夢のような「実写化」実現の日を、楽しみに待ちたいと思います。

(マグミクス編集部)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください