『コナン』『金田一』どっち派？ 30年以上推理マンガ界をリードする両作の魅力を振り返る

■日本を代表するふたつの推理マンガ

『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』は、どちらも1990年代に連載が始まり、現在も連載されている人気推理マンガです。その後、アニメを始め幅広いメディア展開が行われただけに、マンガやアニメのファンでなくても多くの日本人が知っている作品でしょう。

　そんな日本の推理マンガ／アニメシーンを今に至るまで牽引し続けている2作品ですが、どちらが人気なのでしょうか。今回は両作がどんな内容だったか、そして作品の魅力を振り返ってみましょう。

『金田一少年の事件簿R』メインビジュアル　(C)天樹征丸・さとうふみや・講談社／読売テレビ・東映アニメーション

●日本で生きていて触れない人はいない？『名探偵コナン』のすごさ

『名探偵コナン』は1994年1月から「週刊少年サンデー」で連載されている作品で、さまざまな事件が巻き起こるなか「見た目は子供、頭脳は大人」な小学生の江戸川コナンやその仲間たちが解決に向けて活躍します。TVアニメは1996年から現在まで放送され続け、劇場アニメも1997年以降はほぼ毎年公開されて近年は大ヒットを連発する人気シリーズです。

　そんな『名探偵コナン』の魅力は世界観の懐の深さ（こんなにバラエティに富んだ事件が起きる推理もの、ほかに存在するのでしょうか？）、「縦軸」となるストーリーの存在感とそれにからむメインキャラクターの人気など多岐にわたりますが、ここではそれらを生み出した圧倒的なボリュームと広がりに触れましょう。

　例えば原作は2017年に1000話を達成し、単行本も堂々の100巻超え。TVアニメも『サザエさん』や『ドラえもん』といった国民的作品に次ぐようなロングシリーズとなっており、ボリュームは1100話以上と膨大で原作にないアニメオリジナルの割合が多いのが特徴です。また短い話数で終わるエピソードが『金田一少年の事件簿』に比べて多く、見やすい点もありがたいでしょう。

　ほかにも学習マンガや学習ソフト、脱出ゲームなどのリアルイベントに留まらず、2015年には鳥取の空港が愛称を「鳥取砂丘コナン空港」へと変更しました。単に長く親しまれているだけでなく、日本で日々過ごしているなかで『名探偵コナン』は接点が多く、それだけに認知度という点では抜群です。

●事件ごとの深みが魅力の『金田一少年の事件簿』

　高校生の金田一一（はじめ）が難事件を解決していく『金田一少年の事件簿』は1992年に「週刊少年マガジン」で連載が始まりました。原作は2001年に一旦連載が終了したものの、その後も断続的に連載が続いており、現在は「コミックDAYS」で37歳になった一が主人公の『金田一37歳の事件簿』が連載中です。こちらも初期シリーズこそ27巻で完結しましたが、その後の作品も含めるとさとうふみや先生による作画の作品だけでも90巻ほどの単行本が発売されています。

『金田一少年の事件簿』は1995年にはTVドラマ、1996年からはアニメが展開され、その後何度かリメイクなどが行われました。それらも、そして原作も同様ですが『名探偵コナン』に比べると1事件辺りの登場人物の数が多く尺も長めで、金田一と一緒に事件の謎を解く、本格ミステリー的な楽しみ方をしている人も多そうです。

　また、物語がじっくり展開されるため個性が際立つキャラクターが多いのも大きな特徴ではないでしょうか。各事件の犯人が主人公となるオムニバス作品『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』が成立するのは『金田一少年の事件簿』ならではと、いえそうです。

　また、TVにおける視聴率で比べると『名探偵コナン』のアニメは23.4％が最高なことに比べ（これも非常に高いですが）、『金田一少年の事件簿』のドラマは初期シリーズで29.9％と圧倒的に高く、当時の人気ぶりがうかがえます。そのため、30～40代の人は特に初期シリーズのキャラクターやどんな事件が発生したかを何となくでも覚えているでしょう。

●あなたは『コナン』『金田一』どちらが好き？

　両作は一時期TVアニメが同じ放送局で時間帯が前後していたため1時間の「ミステリーアワー」として扱われたり、2009年にはゲーム『名探偵コナン＆金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』で共演したり……といった話を持ち出すまでもなく、決して対立するものではありません。しかし今は『名探偵コナン』は劇場アニメ第「27」作『100万ドルの五稜星（みちしるべ）』が2024年4月21日に公開され、1997年に始まったTVアニメ『金田一少年の事件簿』は2024年4月7日に「27」周年を迎えました。この意味深なタイミングで、この2作について考えを巡らせてみましょう。

（はるのおと）