『ファイナルファンタジー6』の思い出 バブル完全崩壊前「最後の時期」の傑作
マグミクス / 2020年4月2日 8時10分
■26年前の秋葉原で
1994年4月2日、スクウェア(現スクウェア・エニックス)からスーパーファミコン版『ファイナルファンタジーVI』(以下、FFVI)が発売されました。個性豊かな魅力あるキャラクターによる群像劇と、本体の性能限界を超えたグラフィックと演出、美麗なサウンドは、今なおスーパーファミコンの最高傑作として語り継がれています。たまたま訪れた秋葉原で『FFVI』の発売に遭遇し、思わず購入してしまった経験を持つライターの早川清一朗さんが、当時の記憶を語ります。
* * *
ちょうど大学に入学したばかりの筆者は、新たな生活を始める準備のために、秋葉原を訪れていました。電気街口の右側にあったバスケコートを横目で見ながら「ラーメンいすず」を通り過ぎ、そのまままっすぐ道路を渡りました。そして今は「かつや」が入っているテナントに当時店を構えていたバッタ屋でMDプレイヤーを購入してそのままふらふら歩いていると、そこら中のゲーム店に「『FFVI』入荷しました」という内容の張り紙が貼られていることに気付いたのです。
ついこの間まで受験生だった筆者は、小さい頃から楽しんでいた『ファイナルファンタジー』の新作が出ていたことすらも知りませんでした。当然予約もしていませんが、この時かなりの数が入荷していたようで、問題なく購入することができたのです。ただ、いくらか値引きしていたような記憶はありますが、それでも1万円前後の買い物をポンとできたのは、受験からの解放感と、本格的な大学生活まで少し時間があったからでしょう。
この時期は肌感覚としてのバブル経済が完全崩壊する数年前の時代にあたり、スーパーファミコンのカセットも1万円を超える物は珍しくありませんでした。おそらく、日本という国に余裕があった最後の時期だったのでしょう。何の不安もなかった『FFVI』を遊んでいた瞬間に、戻れるのであれば戻りたいという気持ちがとめどなくあふれてきます。
■ゲームの進化を垣間見た
ゲームボーイアドバンス版『ファイナルファンタジーVI アドバンス』(スクウェア・エニックス)
家に帰った筆者は、久々にプレイする『ファイナルファンタジー』の新作に心躍らせていました。さて、今度はどんなワクワクをもらえるのだろう。弾む心で電源を入れた筆者の目に映し出されたのは、吹雪く世界を闊歩する3体の魔導アーマーでした。
このシーンを見た瞬間、スーパーファミコンでこんなことができるの!? といきなり先制パンチを喰らった気分になり「このゲームはただのゲームじゃない!」ことを気付かされたのです。
その後もゲームを進めるごとに現れる、スーパーファミコンの常識を飛び越えたレベルのグラフィックと演出、そして音楽は、たちまちのうちに筆者の心をわしづかみにしていったのです。
大学受験が終わったばかりなので、親もうるさいことは言いません。このころには自分の部屋にもTVがあったので、お菓子やジュースを買って籠城し、3徹ほどして一気にクリアしたのですが、最後はもうろうとしていてあまり記憶がなく、最後、ティナの髪がなびいた瞬間と、モブリズの村のカタリーナが子供を生んだシーンだけをやたらはっきりと覚えています。しかしこのとき、筆者はある見落としをしていました。ええ、アレです。シャドウです。
それからしばらく経った頃、魔大陸で見殺しにしたシャドウは、ラスト5秒まで待てば救出できたことを知り、筆者は身悶えする羽目になりました。速攻でのクリアを目指したので、情報を待つことができなかった故の見落としでした。後に「ファミ通」のキャラ紹介で「魔大陸では、たいてい置き去りにされる」と書かれていたそうなので、筆者と同じように全く気付かなかった人が本当に多かったのでしょう。あの脱出シーンの緊張感はかなりのものなのですぐ離脱したくなってしまいますが、改めて考えてみれば何の仕掛けもないならカウントダウンする必要もないわけで、そこに気付けなかったのはちょっと甘かったなと後悔しきりです。
というわけで、2回目のプレイに突入した筆者はたっぷりと時間をかけて、隅々まで遊びつくすことを決意します。じっくりとキャラクターを育成してできる限りアルテマを覚えさせ、ゆっくりとストーリーを読み、シャドウを救出し、ケフカの非道に怒り、そして大団円を迎えました。それからもやりこみを続け、多分4~5回はクリアしたかと思います。
スーパーファミコンでの『ファイナルファンタジー』シリーズはVIで幕を閉じますが、その後の展開は皆さんご承知の通りかと思います。日本を代表するタイトルとして、今後も素晴らしいゲームを生み出していってほしいと筆者は切に願っています。
(ライター 早川清一朗)
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