『熱血硬派くにおくん』 校内暴力が社会問題の時代、バーチャルなケンカに明け暮れる
マグミクス / 2020年4月17日 16時50分
■「つっぱることが男の勲章」だった昭和の時代
「十年一昔」という四字熟語があるとおり、世の中は常に著しく移り変わるものですが、今から40年前、1980年代は「若者文化」も今と大きく様相を変えたものだったと思います。
当時といえば「校内暴力」が社会問題となりました。1980年にTBS系列で放映された『3年B組金八先生』の第2シリーズや歴代TVドラマの中で最高視聴率である45.3%となった1983年の『積み木くずし』、1984年の『スクール☆ウォーズ』などのドラマや、1983年に「週刊ヤングマガジン」で連載が開始された『ビーバップ・ハイスクール』(講談社刊 作:きうちかずひろ)などで「不良」に焦点が当てられています。そんな時代とリンクして1986年にアーケード版、そして翌年にファミコン用ソフトとしてテクノスジャパンから登場したのが『熱血硬派くにおくん』です。
ゲームの内容は「正義の不良」である「くにお」が、毎度、毎度、「熱血高校」の前で敵からシバかれる友人の「ヒロシ」を倒した相手を「待てコノヤロー」と叫びながら追い、 復讐するというものなのですが、そこはやはり昭和のゲーム。こうして文字にしてしまうと血なまぐさい感じになってしまいますが、当時の「ツッパリのケンカ」がコミカルな様子で描かれています。
まず1面ではライバル高校の「りき」の手下たちと駅のホームでの乱闘からスタート。複数の敵を倒す「格闘ゲーム」としては、このテクノスの『熱血硬派くにおくん』が元祖といわれています。もちろん、今の世の中で不良同士が駅で闘う設定などはあり得ないのかもしれませんが、筆者が中学生だった頃、「校内暴力」が問題となり、全民放各局が取材に来た「2コ上の先輩ら」の間ではしばしば見られた光景だったと思います。
もちろん、不良でも何でもない筆者は、そんなバイオレンスな世界とは無縁だったのですが、ゲームの世界なら話は別。1面では「りき」の手下をホームから投げ飛ばしつつ、マウントパンチをし、2面の「しんじ」が率いる暴走族を相手にした時は敵を海に叩き落とし、体当たりしてくるバイクをかわしながら後ろ蹴りで倒し、3面では、「くにお」の倍近くある巨体を誇るスケ番「みすず」の手下たちを女性といえども容赦なくボコボコにシバキ倒したりしたことも昭和の懐かしい思い出です。
ちなみにこの『熱血硬派くにおくん』で、最終面の相手はヤクザの「さぶ」で、ここではスキンヘッドにサングラスの手下たちもシッカリと武器を所持。ドスを突き刺さんと「くにお」に向かってくるのですが、ボスキャラの「さぶ」は拳銃まで持っています。もちろん、当たると即死です。こうして活字にするとやはり生臭いことこの上ないのですが、実際のゲームはというと「くにお」の「おりゃあ」という掛け声や、敵キャラのセリフもコミカルな味わいを醸し出しています。なかでも筆者は「みすず」の「なめてんじゃねーぞ」という棒読みがお気に入りです。
またファミコン版ではアーケードよりルート設定が複雑化し、「りき」相手の時はホームのみならず電車のなかでもバトルが繰り広げられ、「しんじ」の暴走族相手ではバイクを走らせながら敵を蹴り落とすというシチュエーションも追加されています。また敵キャラにヤラれた際、黒バックの画面に相手の顔とセリフが浮かび上がるのですが、音声がない分、「さぶ」が「おんどりゃ~」とだけ言うシーンはかなりシュールです。
その後、「くにおくん」シリーズは「ドッチボール部」という設定が加えられ、スポーツジャンルのゲームとしても展開を見せるのですが、やはりマストは初代のアーケード版。筆者が現実にケンカに明け暮れた武勇伝などはないですし、そうしたことは一切ゴメン被りたいのですが、そんな非日常の世界を体感できるのもゲームの醍醐味ではないでしょうか?
(渡辺まこと)
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