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『ULTRAMAN』TV放送 歴代「ウルトラマン」シリーズファンに問うテーマ性

マグミクス / 2020年4月19日 9時50分

『ULTRAMAN』TV放送 歴代「ウルトラマン」シリーズファンに問うテーマ性

■Netflixで最も試聴されたアニメ

 フル3DCGアニメ『ULTRAMAN』が、TOKYO MXで2020年4月12日(日)から、BS11で4月14日(火)からテレビ放映開始。特撮ドラマの金字塔『ウルトラマン』をモチーフに、最新のモーションキャプチャー技術によって、リアルなバトルアクションが楽しめるSFアニメになっています。2019年4月からNetflixで全13話がネット配信され、日本で最も視聴されたアニメコンテンツとなった話題作です。

 原作となっているのは、「月刊ヒーローズ」で連載中の人気コミック『ULTRAMAN』(原作:清水栄一、作画:下口智裕)です。3DCGアニメを得意とする荒巻伸志監督と、『東のエデン』(フジテレビ系)などで人気の神山健治監督が共同演出していることでも注目を集めました。シナリオは神山監督が、絵コンテは荒巻監督がリードする形で進めたそうです。

 世界各国にネット配信され、神山監督と荒巻監督はアニメーション界のアカデミー賞と呼ばれる「アニー賞」の監督賞(テレビ/メディア部門)にもノミネートされました。海外でも高く評価され、第2シリーズの制作も決定しています。

■強化スーツを着て、ウルトラマンに変身

 コミック&アニメ版『ULTRAMAN』がユニークなのは、主人公が変身して、巨大なウルトラマンになるのではなく、強化スーツを着て、等身大の姿で敵と戦うという設定です。荒巻監督は強化スーツの原典であるSF小説『宇宙の戦士』の愛読者であり、劇場アニメ『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(2012年)などを手掛けてきました。「強化スーツ」ものの第一人者と呼べる監督です。

 物語の主人公となるのは、高校2年生の早田進次郎(CV:木村良平)。かつて、ウルトラマンと同化し、怪獣や凶悪宇宙人たちと激闘を重ねてきた科学特捜隊の隊員・早田進(CV:田中秀幸)のひとり息子です。ウルトラマンが「光の国」へ帰った後も、早田進の体には「ウルトラマン因子」が残り、息子の進次郎には父親以上の能力が眠っています。

 謎の敵・ベムラーが現れたことから、進&進次郎親子はそれぞれ極秘に開発されたウルトラマンスーツを装着して、戦うことになります。初代ウルトラマンにそっくりなウルトラマンスーツだけでなく、密かに存続する科学特捜隊の隊員・諸星弾(CV:江口拓也)はヴァージョン7と呼ばれるウルトラマンスーツを着用して戦います。さらには、裏社会の情報屋と自称するジャック(CV:竹内良太)も登場します。歴代の「ウルトラマン」シリーズと共に育ったファンには、見逃せない展開の連続です。

■『攻殻機動隊S.A.C.』に通じるキーパーソン

Netflix限定で配信開始された『ULTRAMAN』 (C)TSUBURAYA PRODUCTIONS (C)Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi (C)ULTRAMAN製作委員会

 アニメ版『ULTRAMAN』は、原作コミックの第1巻~8巻をベースにしています。シリーズ前半は高校生である進次郎がウルトラマンとしての驚くべきパワーと責任の重さに戸惑う様子がナイーブに描かれていますが、第9話から進次郎の通う高校の1年生・北斗星司(CV:潘めぐみ)が現れ、ストーリーがよりヒートアップします。進次郎のことを「先輩!」と呼ぶ、人懐こい北斗ですが、実は二面性のあるキャラクターなのです。

 進次郎と諸星は科学特捜隊に籍を置き、国家プロジェクトによって莫大な予算を費やした強化スーツが与えられています。でも、北斗は民間で独自開発されたエースヴァージョンのスーツで戦います。一種の自警団といっていいでしょう。活動費用を捻出するため、裏ではカツアゲもやっています。独自の正義観に基づいて行動する北斗は、目的を達成するためなら進次郎たちさえも利用しようとします。

 組織に頼らず、孤独に戦う北斗は、神山監督が最も感情移入しやすかったキャラクターではないでしょうか。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の「笑い男」や『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』のクゼ、『東のエデン』の滝沢朗など、神山監督の作品では社会から疎外されながらも、自分の信じる正義を貫こうとするキャラクターがたびたび描かれてきました。サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』や『ナイン・ストーリーズ』に収録された短編小説『笑い男』を青年時代に何度も読み返したという神山監督ならではの、複雑な心理を持ったキャラクターに北斗はなっているように感じられます。

■ウルトラマンが教えてくれたこと

 1966年にテレビ放映が始まった『ウルトラマン』には、絶対的な正義の味方というイメージが日本人の心に焼き付いています。でもその一方では、怪獣と戦うことに疑問を投げかける「怪獣墓場」や「故郷は地球」などの印象深いエピソードもありました。無敵のヒーローであるはずのウルトラマンがゼットンに倒された最終回「さらばウルトラマン」は、子どもたちに大変な衝撃を与えました。

 続く『ウルトラセブン』の伝説のエピソード「ノンマルトの使者」では、実は人類は侵略者だったという驚愕の結末が描かれました。自分たちこそが正義であるという思い込みはとても危険であることを、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』たちは教えてくれました。「ウルトラマン」シリーズを観て育った世代には、「ウルトラマン因子」のごとく、独自のヒーロー観が植え付けられているように思えます。

 SFマンガ&3Dアニメとしての面白さはもちろん、『ULTRAMAN』には「ウルトラマン」シリーズを観て大人になった世代に、「ヒーローとは、そして正義とは何か?」という命題に再び向き合わせてくれる吸引力があります。『ULTRAMAN』は毎週日曜23時からTOKYO MX、毎週火曜24時30分からBS11でテレビ放映され、Netflixでも配信中です。もしかすると、あなたの体内に眠っていた「ウルトラマン因子」が目覚めるかもしれません。

(長野辰次)

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