シリーズ唯一のRPG『ロックマンX コマンドミッション』 異例ゆえに不安視され…
マグミクス / 2020年7月29日 18時10分
■「異例」な「ロックマンX」シリーズのコマンドRPG
「異例」。
筆者が『ロックマンX コマンドミッション』(以下、コマンドミッション)を振り返る際、決まってこの言葉が頭をよぎります。というのも本作は、10作以上にも上る「ロックマンX」シリーズ(ナンバリング・派生タイトル合計)のうち、唯一の”コマンドRPG”だったからです。
『コマンドミッション』は、2004年7月29日にカプコンより発売されたゲームキューブ/プレイステーション2用ソフト。本作はナンバリングタイトルではないため、主人公の「エックス」(CV:櫻井孝宏)やその仲間「ゼロ」(CV:置鮎龍太郎)といった主要人物は登場しますが、シリーズ中においては外伝扱いとされています。その所以からか、エックスのビジュアルデザインに幾つか変更が見られるのも特徴的。四肢のブラックカラーに加え、首周りには赤いビームマフラーも搭載されていました。
本編中はエックスを中心に数名から成るパーティーを編成。反乱活動を企てるAIロボット「レプリロイド」を阻止するべく、とある事件の発端となった人工島「ギガンティス」を舞台にさまざまな強敵と相対します。エックスを操作して3Dフィールドを自由に探索。道中にはびこる敵をエンカウントの後に退け、各ステージ内のギミックを解いて先へと進む。そして最奥に待ち構える個性的なボスも打ち負かし、章仕立てのストーリーを読み解く……というのが、本作の基本的な流れ。冒頭でコマンドRPGと述べた通り、キャラクターの育成要素、及びターンベース制とコマンド選択方式をアレンジした戦闘システムに重きが置かれていたのです。
しかし、発売当時は「なんで『ロックマンX』がRPGになったの?」と『コマンドミッション』の作風に疑問を感じたユーザーも多かったように思われます。そもそも「ロックマンX」シリーズは1993年の誕生以降、スピーディーな横スクロールアクションを根幹に据えて発展を遂げてきました。こうした”アクション特化”のゲームシステムから真逆の”RPG”に様変わりするとなれば、少なからず不安視されるのも仕方なかったのかもしれません。
■計4名の新キャラクターに心惹かれた
とはいえ『コマンドミッション』の蓋を開けてみると、筆者の場合は「むしろよくまとまったRPG」という印象を受けました。エンカウント率の高さやボリューム不足といった荒削りな面も見られますが、従来シリーズのテイストを踏襲しつつ、開発陣が戦闘中のテンポ感を含めて”「ロックマンX」らしさ”を意識していたのは間違いないでしょう。そうした評価点に加え、筆者はエックスと行動を共にするパーティーキャラクターの面々に心惹かれていました。
シリーズ作品に登場済みのエックス、ゼロ、「アクセル」(CV:高山みなみ)を除き、本作から登場するパーティーキャラクターは「スパイダー」(CV:神奈延年)、「マッシモ」(CV:川津泰彦)、「マリノ」(CV:鈴木麻里子)、「シナモン」(CV:野中藍)の計4名。作中ではボイス付きのイベントシーンやエックスとの会話を通し、彼らの心情や個々の置かれた環境、反逆心に満ちた敵組織「リベリオン」と戦う理由などが明かされました。
特に印象深いのが、最序盤からエックスと結束を強めるスパイダー。当初は謎めいたギャンブラーとして登場を果たしますが、敵の攻撃から味方をかばうだけでなく、時には味方を敵陣から脱出させるために自爆を図るなど、攻略を進めるにつれて仲間を想う熱情が露わになります。それゆえに、ゲーム後半で発覚する新事実はインパクト大。打倒リベリオンを目標に遠路はるばる歩んできたユーザーに対し、圧倒的な存在感を知らしめました。
それまで「ロックマンX」が培ってきた伝統から一転、コマンドRPGを標榜に掲げた『コマンドミッション』。惜しいことに本作は過去タイトルを収録した『ロックマン X アニバーサリー コレクション』には入っておらず、今から遊ぶとなれば少々手間がかかってしまいます。懐かしのレトロゲームがHDリマスター化されて最新機種にかえってくるように、本作もいつの日か奇跡の復活を遂げてほしい。シリーズ唯一の異例に魅せられたファンとして、そう切望してやみません。
(龍田優貴)
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