円谷プロ&マーベルによる新たなウルトラマンが刊行中。「アメコミ化」には歴史があった
マグミクス / 2020年11月1日 19時40分
■セブンは敵として登場? ファンも気になる展開
円谷プロとマーベルがタッグを組んだコミック『THE RISE OF ULTRAMAN』の刊行が2020年9月から始まり、現在第2巻まで発売されています。全5巻を刊行予定で、新たなウルトラマンの物語として注目が集まっています。
数々の名作のアートを手掛けているアレックス・ロス氏によるカバーアートをはじめ、オリビエ・コイペル氏によるスパイダーマンとのコラボカバーなど、多彩な別バージョンカバーも話題になっています。
さらに、CLASSIC PHOTOバージョンとしてウルトラマンとメフィラス星人との戦いを映した、円谷プロの実際の特撮写真をカバーに使用するなど、アメコミカバーでは貴重な一冊になっています。
10月7日には第2巻が発売され、円谷プロでヒーローや怪獣のデザインなどを手がけるデザイナー・後藤正行氏による別バージョンカバーが登場し注目を集めています。
円谷プロの塚越隆行CEOは、「マーベルでの『THE RISE OF ULTRAMAN』シリーズの発売を機に、ウルトラマンを世界的ステージに向け大きく前進させていきます」と意気込みを語っています。
円谷プロとマーベルによる共同企画で制作されるウルトラマンは、脚本を「ウインター・ソルジャー」などで知られるカイル・ヒギンズ氏と、マット・グルーム氏が担当。作画は「アベンジャーズ」や「ファンタスティック・フォー」などを手掛けたフランチェスコ・マンナ氏。怪獣などの脅威から人類を守る「United Science Patrol」の一員で、怪獣退治の専門家の道を歩んできたシン・ハヤタとキキ・フジが主人公となり、宇宙から来た怪獣や謎の戦士とめぐり合う……という内容です。
8月に公開されたムービーでは、実写版ウルトラマンの第1話「ウルトラ作戦第一号」を思わせるカットが映され、ゼットンとともに、ウルトラセブンも描かれています。ウルトラセブンと戦っているようなシーンまで描かれており、この映像を見るだけで、ウルトラマンに親しんだ日本のファンは同作の展開が非常に気になるのではないでしょうか。
■アメコミ化は初じゃない! 過去のウルトラマンコミックスの歴史
「ウルトラコミックス」から1993年に出版された『Ultraman』第1巻 (C)1993 Tsuburaya Productions Co., Inc.
円谷プロがマーベルとタッグを組んだ今回のウルトラマンの新作コミックですが、ウルトラマンがアメコミとして発売されるのは、実は今回が初めてではありません。
1990年に円谷プロダクションがオーストラリアで製作したテレビ版の『ウルトラマングレート』をきっかけに、ウルトラマングレートをメインにしたコミックスが2作、そしてウルトラマンティガを元にしたコミックスが1作存在します。
1993年にアメリカのHarvey Comicsが「ウルトラコミックス」のレーベルで発売『ULTRAMAN』は、ウルトラマングレートの本編の3年後を舞台として、怪獣ゴーデスの復讐を描く内容です。全3巻が発売されました。
その後、1994年に同じHarvey Comicsから「Nemesis Comics」とレーベルを一新してウルトラマングレートのコミック『ULTRAMAN』が続編として刊行。完全オリジナルのストーリーが展開されました。
主人公であったジャック=シンドーが途中で死に、エース=キムラという日系アメリカ人に変更するといった、大幅な変更などが加えられています。Harvey Comicsは同作の刊行後、1994年に出版事業を停止しているため、以後続編は発売されていません。
一方、「ヘルボーイ」で知られる大手出版社Dark Horse Comicsから2003年に出版されたのが『Ultraman Tiga』。香港の漫画家であるTONY WONGとKHOO FUK LUNGによって香港コミックスとして出版された作品を翻訳出版したものです。ストーリーはテレビ版のストーリーをなぞったものと完全なオリジナル展開が合わさった内容になっています。
もちろん、日本でコミカライズされたウルトラマンのコミックスも翻訳出版されていましたが、大手出版社によるウルトラマンのアメコミ化作品が発売されるのは、実に17年ぶりです。
『THE RISE OF ULTRAMAN』脚本を担当したマット・グルーム氏は「怪獣は、 我々の世界の闇や恐怖の具現化として表現されてきました。しかし、円谷英二さんほど、迫りくる切実で膨大な問題として理解している人はいませんでした」と、ウルトラマン作品における怪獣の取り上げ方に影響を受けたことを語っています。
日本で生まれ育ってきたウルトラマンに、マーベルの精神をかけ合わせて生まれる新たなウルトラマンはどうなっていくのか、注目したいところです。
(大野なおと)
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