変化する「プロ棋士とコンピュータ」の関係。昔・ライバル、今・共存共栄、将来は…?
マグミクス / 2020年11月3日 17時50分
■将棋プロ棋士はAIをどのように活用? 多くが感じる「利点」とは
現在、多くのプロ棋士が将棋研究でコンピュータ、いわゆるAI(人工知能)を導入しています(以降、AIと表記します)。有名なところでは、豊島将之二冠(竜王・叡王)が、2014年の将棋ソフトとの対局「電王戦」参加を機に研究会(有志のプロ棋士たちが集まって行うもの)をやめ、自宅でAIを使い、ひとりで研究するスタイルにしたといいます。結果、その後、竜王・名人という将棋8大タイトルのうち、頂点ともいえるふたつのタイトルを獲得しました。
話題の藤井聡太二冠(棋聖・王位)も、早くからAIを導入しています。そしてさらに! 2020年8月の団体戦決勝で、藤井二冠が所属するチームが優勝し、賞金1000万円をゲット(3人で分配)。インタビューで賞金の使い道を聞かれた藤井二冠は「コンピュータ(パーツ)を買いたい」と答え、その後、実際に高価なコンピュータを購入したそうです。
いま、最前線のプロ棋士たちはどのようにコンピュータやAIを活用しているのでしょうか? もちろん使い方は人それぞれのようですが、何より「さまざまな設定にできる」のが一番の利点だそうで、時間設定はもちろん、「〇手先しか読まない」など、棋力を調整し、さまざまな視点で将棋を分析。さらに、AIソフト同士を対戦させ、その対局を冷静に考察するという方も多いようです。
■まさに仁義なき戦い? 「世界チャンピオン vs AI」
現在は将棋中継でもAIが導入され、どちらが有利なのかを%で表示、さらにAIが予想する「次の一手」ベスト5も表示され、私たちもこれまでとは違う観戦が楽しめるようになりました。
しかし、かつては仁義なき戦い(?)ともいえる、プロ棋士とAIの壮絶な争いがありました。それは将棋だけではなく、ボードゲームの世界で30年ほど前から始まっています。1990年代から、オセロ、チェス、将棋、囲碁のそれぞれにおいて、かなり高度なAIソフトが開発され始めます。そして1997年、チェスの伝説的な世界チャンピオンがAIと対決し、2勝3敗1分け。さらにオセロの世界チャンピオンが6連敗するなど、衝撃的な出来事が起こりました。
そして運命の2017年、人類最強王者と謳われた中国の囲碁王者がAIに3連敗! 将棋でも、第2期電王戦において、佐藤天彦名人(当時)がAIに2連敗(先手番・後手番)したのです。これにより、「もはやAIに人間は勝てない」と大きく報じられました。
しかしその後、逆にAIを利用して強くなろうという動きが起こり、多くのプロがAIを導入、まさに「共存共栄の時代」に入ったのです。
■AIを超えた一手が話題に!藤井聡太の勝負勘
ニンテンドーSwich用ソフト『藤井聡太棋士監修の本格将棋トレーニングゲーム』(ゲームスタジオ)。藤井聡太氏自身も、三段時代からコンピュータとAIを研究に導入している
2017年当時、「佐藤名人AIに2連敗」よりも大きく報じられたのが、プロデビューしたばかりの藤井聡太二冠(当時四段)でした。すい星のごとく現れた天才少年。この2020年には、ついにタイトルをふたつ獲得、そのタイトル戦のなかで伝説の一手が誕生しました。
棋聖戦第2局、藤井二冠が指した58手目の「3一銀」。23分考えて指した一手ですが、4億手を読ませたAIではベスト5にも入らなかったものの、6億手読ませると、最善手のベスト1位になる手だったのです。「藤井二冠はAIを超えた!」と話題になりました。さらなる「AI超え」はあるのか? 今後の藤井二冠の活躍が楽しみです。
■共存共栄の時代から新たな時代へ
AIの進化により、新たな可能性が広がりました。「金は守りの駒」「金は3筋より上に動かすな」など、これまでの常識がAIによって否定され、新しい戦略が次々と誕生しました。そのひとつの象徴が「エルモ囲い」。これはAIが発想した新陣形で、2020年4月、優れた新構想に贈られる升田幸三賞に選ばれたのです(ソフト受賞は初めて)。AIの影響で将棋は新次元に入ったのかもしれません。
あるトップクラスの棋士は「AIは能力を引き出すツール」とコメントしています。高度なAI将棋を使えば、ひとりで学習・研究することができ、棋力を上げることが可能。ということは今後、“天才棋士突如出現する!”というドラマチックな展開も十分考えられるのです。
天才将棋棋士!その正体は「小学生の女の子」、あるいは「80歳の好々爺」、さらに「10代の外国人女性」……なんてことが起こる可能性もないとはいえないのです。
(久津志雪広)
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