『SLAM DUNK』天才・桜木花道の「得点数」が、私たちに教えてくれるものとは?
マグミクス / 2021年1月29日 16時50分
■現実の厳しさも、努力の大切さも…バスケ部での濃密な日々
2021年1月7日、『SLAM DUNK』作者の井上雄彦氏がTwitterで「【スラムダンク】 映画になります!」と投稿。往年のファンは歓喜に包まれました。『SLAM DUNK』は、1996年に「第1部」が完結し、25年が経った現在も語り継がれる名シーンが多い、バスケマンガの金字塔です。
同作の主人公、桜木花道は自分を「天才」と称するお調子者ですが、彼を「努力の人」として見てみると、またひと味違う魅力が見えてきます。
不良少年・桜木花道。190cm近い身長と抜群の身体能力を持つ彼は、ディフェンスにおいて非常に重要な役割である「リバウンド」で才能を発揮します。彼のモデルは1980~90年代に活躍した名プレイヤー、デニス・ロッドマンで、「リバウンド王」というニックネームの持ち主。まさに桜木花道のイメージどおりな選手ですね。
チームが攻勢に転じるあらゆる場面で、次々とリバウンドを取りまくる桜木。しかしそんな活躍の一方で、実は彼の「得点数」はそれほど多くありません。
練習試合・公式試合を含めると、作中の合計試合数は11。そのうち、桜木の得点は全て足しても37得点です。春からバスケを始めて、夏の全国大会までにこの得点数と考えると、やっぱり才能あるじゃん! という結論にもなりそうですが(笑)、やはりリバウンドほどのインパクトはありません。しかも、作品名でもある「ダンクシュート」は、公式戦でわずか3回にとどまります。
桜木は湘北高校バスケ部に入部して以降、キャプテンの赤木剛憲の指導で、基礎練習を開始。どんなにハードな練習後も、それだけは必ず行ってきました。そして夏休みには、監督の安西先生と悪友、そして憧れの赤木晴子と一緒に、1週間でシュート2万本という冗談のような特訓も行いました。
ときに地道に、ときに短期集中で猛練習を重ねた桜木でしたが、その努力をもってしても、彼が妄想した派手な活躍はできませんでした。実際に彼は、全国大会を決める陵南高校との一戦で、いやというほど自分の経験不足を突きつけられ、屈辱感に襲われています。そこには一朝一夕では身につけることのできない、競技力の厳しさを垣間見ることができます。
では、彼の努力はムダだったのか。決してそうではありません。
全国大会1回戦の豊玉高校戦ではわずか4得点でしたが、彼の得点がなければ、チームは接戦を制することができませんでした。そして2回戦、伝説の名試合ともいえる山王工業との試合では、チームの主軸として14得点をマーク。試合中の負傷による痛みに耐えながら、試合終了直前に流川からのパスを受け取って放ったジャンプシュートは、劇的な「ブザービーター」(試合終了などのブザーが鳴ると同時に放たれて、決まったシュート)となりました。
努力が必ずしも、自分の理想通りの結果をもたらすとは限らない。それでも、積み重ねた力が、積み重ねた努力が「奇跡」と呼べる結果を呼び込むことがある。
作中で桜木花道の歩んだ濃密な道のりは、そんな雄弁なメッセージとともに、私たちを励ましてくれているのです。
(サトートモロー)
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