「MILLION TAG」をきっかけに、少女マンガ編集者も前に出たい…「マーガレット」ハタケヤマさん
マグミクス / 2021年3月14日 14時30分
■「恋愛×○○」で、作家さんの強みを引き出したい
マンガアプリ「少年ジャンプ+」が、次世代のスター漫画家を発掘することを目的とした新漫画賞「MILLION TAG」を実施しています。漫画家と編集者がタッグを組んで課題に挑み、作品づくりの過程もYouTubeで配信、優勝者は賞金500万円を手にするほか、「少年ジャンプ+」での連載やコミックスの発売、アニメ版の制作・配信(1話分相当がYouTube「ジャンプチャンネル」で配信)が確約されるなど、異例づくしの取り組みです。
この「MILLION TAG」の企画には、集英社の少女マンガ誌「マーガレット」の編集者も参加しています。これまで、『ふたりで恋をする理由』『彼女が可愛すぎて奪えない』『アンクールデッド』などの作品を担当してきた、編集者のハタケヤマさんにお話を聞きました。
* * *
――ハタケヤマさまは「MILLION TAG」に参加する編集者の中で唯一、女性向けのマンガ雑誌を担当されています。今回この企画に参加された理由は何だったのでしょうか?
ハタケヤマ 最近は、編集者もSNSで名前を出して活動する方が多いのですが、実は弊社の少女マンガ編集部にはそういう人がほとんどいないんです。そこで、こういう機会に外に出て行って、「集英社の少女マンガ編集部にはこういう人がいるんだ」「こういう作品があるんだ」と思ってもらえるチャンスだと思い、手を上げさせていただきました。
――普段は少女マンガを担当されていますが、今回は少年マンガの作品づくりに関わることになります。少女マンガと少年マンガの違いについて、どのようにお考えでしょうか?
ハタケヤマ 少年マンガには男性漫画家も女性漫画家もおられますが、少女マンガの漫画家さんは女性が主であるという点は、大きな違いかもしれません。広い目で見れば、もちろん男性の少女マンガ家さんはいらっしゃると思いますが、私が携わっているのは基本的に女性のみなのが現状です。
それから、少女マンガを描く漫画家さんは、バトルやぶつかり合いよりは恋愛や感情の繊細な部分を描きたい方が多いという印象があるので、打ち合わせの時にも恋愛経験や感情の動きを話す機会が多いかなと思います。
――漫画家さんとのやりとりで心掛けていることはありますか?
ハタケヤマ その漫画家さんがどんな才能や魅力を持っているのかを意識して、打ち合せをするようにしていますね。本人が気づいていなくても、すでにデビューをしている、あるいは担当者がついている方には必ず良い部分があるので、その良いところを見つけて引き出したいと思って接しています。
自分が担当している漫画家さんですと、『アンクールデッド』の緒川あお先生は、もともとミステリーを描きたいと強く思っている方ではなかったんです。でも、緒川先生と話をしていて、「人に対する考え方や、世の中に対する価値観が多様な部分が面白い」と感じたので、恋愛のみを軸に描くよりも、ミステリーなど少し意外なジャンルや設定を取り入れて、人間のさまざまな感情を描いていただきたいと思いました。
ただ、メインキャラクターに関しては、「少女マンガ読者」が期待する部分である恋愛にいつ発展してもおかしくない関係性にしたいと思ったので、バディを組んでいる形にしましょうと、連載に向けて打ち合わせをさせていただきました。
――「好き」と「得意」は違う場合もあるのですね。
ハタケヤマ でも、少女マンガ読者が恋愛を期待しているという前提は必要だと思います。同じくマンガ家さんも恋愛を軸に描きたい方が多いかとは思うのですが、恋愛をそのまま描くのではなくて、どんなフックをつけたらいいか、どんなジャンルを組み込めばその人の良さが生きてくるのかを、一緒に考えるようにしています。
■注目度の高さは大きなメリットになる
ハタケヤマさんの担当作品のひとつ、『ふたりで恋をする理由』(作・ひろちひろ)。高校の先輩とその幼馴染という、ふたりの男性と主人公の三角関係を軸に、一筋縄ではいかない恋愛が展開 (C)ひろちひろ/集英社
――今回参加される「MILLION TAG」は、普段開催される漫画賞とは異なる、コンクール形式です。漫画家さんにとってはどのようなメリットがあると思われますか?
ハタケヤマ まず、注目度が最初から高い状態でのデビューになるので、他の新人漫画家さんと比べてスタートダッシュのスピードが比較できないほど速くなると思います。仮に優勝できなかったとしても、参加した時点で最初から読者がついているので、そのあと別の機会にデビューすることになったら「あのとき参加していた人だ」と思ってもらえるのは圧倒的なメリットですね。
――新人漫画家の作品について、どのような点に注目されているのでしょうか?
ハタケヤマ 普段の投稿作品や持ち込み作品に関しては、私は何かひとつ「面白い!」と思える点があるかどうかを基準にしています。絵は拙いけどモノローグの言葉選びにセンスがあるとか、自分では思いつかないような意外性のある台詞回しをしているとか、コマ割りは全然できないけど「このシーンを描きたい!」という意志がすごく強い作品など、漫画家さんが「1個これを出そう」と思っている部分を見つけられたら、担当につきたいと思いますね。
――「MILLION TAG」では、漫画家さんとどのように取り組みたいとお考えでしょうか?
ハタケヤマ 短いスパンで1本の作品を作る形になりそうなので、いつもよりも早く、かつ深い接し方をしなければいけないだろうなと思います。普段新人漫画家さんと接しているのとは違う形を模索する必要があると感じますね。
――漫画家になるために必要な才能とは、どのようなものなのでしょうか?
ハタケヤマ 個人的には「頑張り続けられること」が大事だと思っています。人にないものを描くセンスもすごく重要だとは思いますが、新人漫画家さんと接していると、最終的には描き続けられる人が伸びてくるという感覚があるんです。また、頑張るといっても自分のこだわりに固執するのではなく、マンガを描くためにやれることをどんどんやっていける人、いろんなものを取り入れていける粘り強い人が、実際私が携わってきた漫画家さんには多いように感じます。
――ありがとうございます。最後に、「MILLION TAG」に注目している読者や参加を考えている方へのメッセージをお願い致します。
ハタケヤマ 「MILLION TAG」は、新たな才能が日の目を見る瞬間を目撃できる、他にはない賞です。少しでも参加を考える方はチャンスを逃さず応募していただきたいと思います。まだ、どなたと組むかは分からないのですが、漫画家さんはコメントやファンレターといった読者の反応からすごく力をもらえるので、読者の皆さんにはぜひ好きな作品や漫画家さんを見つけて、いっぱい応援していただきたいです。
※「MILLION TAG」は、2021 年 3 月 21 日(日)まで挑戦者を募集しています。詳細情報は公式サイト(https://sp.shonenjump.com/p/sp/million-tag/)に掲載。マグミクスでは、引き続き「MILLION TAG」に参加予定の編集者の声を紹介します。
(早川清一朗)
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