アニメ『シャーマンキング』7話…麻倉葉の大きな転機となった、ファウストとの戦い
マグミクス / 2021年5月14日 8時30分
■互いに「暗い過去」を背負う者同士の戦い
昨日2021年5月13日放送のTVアニメ『シャーマンキング』第7話では、主人公・麻倉葉とファウストVIII世との戦いが描かれました。そこでは葉の意外な一面を見ることができました。ファウストによって小山田まん太が傷つけられたことでブチギレたのです。
シャーマンファイト参加のため上京する以前、出雲にいた頃の葉は、友達がいなかったようです。彼のシャーマン能力が”異能力”として人びとから恐れられたからなのですが、このあたりのエピソードは単行本『シャーマンキング ZERO』1巻(講談社)でも描かれています。
ただ話は単純ではなく、葉自身も友達を求めておらず、そのため機会を失っていた可能性があります。東京に来てからもそのつもりだったのかもしれません。しかし上京した直後、矢継ぎ早に多くの偶然が重なって、心に大きな変化が生まれました。そのキーパーソンが、まん太です。
ここで言う偶然とは、葉がなんの気まぐれか、まん太に墓場で声をかけたことから始まり、まん太が霊の視える人間だったこと、まん太も心の隙間を何かで埋めたいと無意識で思っていて葉に関わったこと、まん太が木刀の竜に襲われたこと、阿弥陀丸が竜に侮辱されて怒っていたこと、阿弥陀丸が最強の侍だったこと……です。
これらが積み重なった結果、葉は阿弥陀丸と憑依合体してまん太と阿弥陀丸の仇を討つに至りました。そして彼の生活は、出雲時代とまったく違うスタートを切ったのです。
それ以後も、葉が東京での生活を思い出すとき、ほとんどの場面にまん太の姿があります。それは未体験の楽しい時間だったことでしょう。ですから葉にとってまん太は唯一無二と表現するにふさわしい存在で、「初めて出会った人間の友達」なのです。そんなまん太がファウストに傷つけられたとあれば、暴走するのはやむを得ません。
一方、ファウストVIII世も大きな悲哀を背負っていました。幼少期からエリザへの愛を貫いてきた彼は、やっと手に入れた幸福の絶頂で地獄に突き落とされたのです。愛する人を失い、その復活に全てを懸ける男……その様子は、ライトノベル『SHAMAN KING FAUST8』(講談社)で詳細に描かれています。
ところで劇中におけるファウストVIII世の祖先はシャーマンで、500年前のシャーマンファイトに参加していた上、その能力を書物に残していた……それが死体蘇生術(ネクロマンシー)なのですが、ファウストI世は諸説あるものの実在していたと言われています。少しそのあたりを掘り下げてみましょう。
■阿弥陀丸の言葉「そんな勇気」の意味とは?
自身にとって初めての人間の友達を傷つけられ、葉は激昂する。アニメ『シャーマンキング』第7話より
ファウストI世は、錬金術などの魔術に傾倒し、悪魔と契約していたとも言われていますが詳細はわかっていません。その神秘性からさまざまな物語が作られました。もっとも有名なのがゲーテの戯曲「ファウスト」でしょう。
この中でファウストは悪魔メフィストフェレスと契約します。「時よ止まれ、お前は美しい」と口にしたら、魂を奪われるのです。この言葉は「私は今この瞬間に大きな喜びを感じている。だからこの美しい時間よ、どうか止まって欲しい」という意味ですが、ファウストVIII世によれば、これはファウストI世が人生の最後に口にした言葉ということなので、ゲーテの戯曲はフィクションではなかったのです(本作の設定では)!
そしてファウストVIII世は、その「時よ止まれ」という言葉をエリザの現状に当てはめ、「お前は美しい」をエリザへの賛美として使っています。意味の解釈は異なるものの、時代を超えて子孫がその言葉に命を懸けているという意味では、彼が言うように皮肉なものです。
さて、結局試合はファウストの勝利で終わり、葉は涙を流して悔しがります。ここで、葉が言っていた「なんとかなる」という言葉が現実逃避のための甘えであったことがわかります。
本連載で何度か述べていますが、この言葉は本作全体を表す重要なキーワードのひとつで「人事を尽くして天命を待つ」と同じです。努力もせず望む結果が得られるという意味ではないのですが、葉にとって言葉の意味が変わる瞬間がここなのです! ではそんな葉に阿弥陀丸が言った「そんな勇気」とはどういう意味でしょうか?
恐らく阿弥陀丸が言っているのは、今まで「なんとかなる」という言葉を不安から逃げるための誤魔化しとして使っていたとしても、不安から逃げたいのはみんな一緒。重要なのはそれを克服する勇気を出すことだが、その方法も人それぞれ。「克服するぞ!」と自分を鼓舞する人もいるだろうが、「なんとかなる」とユルいことを言って勇気が出るならそれでもいい。だからその言葉を封印してしまう必要はない(但し、逃げの言葉として使うのはもうダメ)……ということなのだろうと思います。
「なんとかなる」という言葉自体に罪があるのではなく、その意味が重要なんだと、先手を打ったとも言えますね。そうでなければ葉はその言葉を封印してしまったかもしれないのですから。敗北から大きなことを学んだ葉が今後どう成長していくのか、ますます目が離せません!!
それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!
(C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京
(タシロハヤト)
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