円谷プロの影のヒーロー『ミラーマン』最終回 主人公の京太郎を襲った「切ない結末」とは?
マグミクス / 2021年11月11日 9時10分
■放送開始から50年のメモリアルイヤー
本日11月11日は何の日かご存じでしょうか? 最近は「ポッキー&プリッツの日」として覚えられていますが、「11」と「11」が左右対象なことから「鏡の日」としても知られています。そして、鏡をモチーフにしたスーパーヒーローといえば、円谷プロが制作した特撮ドラマ『ミラーマン』です。
主人公の鏡京太郎が鏡に向かって変身する『ミラーマン』は、1971年12月5日から翌1972年11月26日までフジテレビ系で全51話がオンエアされました。今年で放送スタートから50年を迎えることになります。
特撮ドラマ界のマエストロ・冬木透氏が作曲した主題歌「ミラーマンの唄」はとても軽快で、耳なじみのよい曲でした。歌詞は「いまだ!キックを使え!目だ!」と、怪獣相手とはいえ少々物騒でしたが。
同じく円谷プロが制作し、1971年4月2日から放送が始まっていた『帰ってきたウルトラマン』(TBS系)とともに、第2次怪獣ブームを牽引した『ミラーマン』ですが、最終回がどんな終わり方だったのかは、あまり知られていないように思います。放送50周年を機に、『ミラーマン』の光と影の世界を振り返ってみたいと思います。
■鏡がない密室でどうやって変身する?
毎朝新聞のカメラマンとして働く鏡京太郎(石田信之)は、地球人である母親と二次元の世界から来た父親との間に生まれた若者です。自分の生い立ちに悩む京太郎でしたが、侵略者インベーダーから地球を守るため、御手洗博士(宇佐美淳也)率いるSGM(サイエンス・ガード・メンバーズ)とともに戦うのでした。
ミラーマンには「ミラーナイフ」などの必殺技がありますが、弱点もあります。鏡か鏡のように光を反射するものがないと、京太郎はミラーマンに変身することができません。第8話「鋼鉄竜アイアンの大逆襲」では、インベーダーからその弱点を突かれます。
母親のことを憎んでいた京太郎は、インベーダーに挑発され、鏡のない密室に閉じ込められることに。自分の愚かさを京太郎は悔やみ、ボロボロと涙をこぼします。そのとき、流した涙が光を反射していることに京太郎は気付き、涙を鏡の代わりにしてミラーマンへと変身を遂げるのでした。
8話以外でも、鏡のないシチュエーションで京太郎がどうやって変身するのかハラハラする場面は多く、子供たちの目線を釘づけにするサスペンス演出に優れた特撮ドラマでした。
■最終回に待っていた驚きの結末
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気になる『ミラーマン』最終回は、第50話「地球最後の日」、第51話「さよならミラーマン」と2週にわたるエピソードとなっていました。なかなか地球を侵略できないことから、インベーダーたちは母星である惑星Xを地球に衝突させるという無茶な作戦を実行に移すのです。
巨大な惑星Xとぶつかれば、地球は滅亡してしまいます。地球滅亡の日が刻々と迫るなか、人類はようやく反重力装置を完成させました。一方、ミラーマンは反重力装置を守るため、刺客として送られてきたエレキザウルス&デッドキングという2体の怪獣と死闘を繰り広げます。
ミラーマンの奮闘によって地球は守られ、インベーダーは全滅しました。戦いの日々は終わったのです。これで京太郎は普通の若者として、幸せな青春を謳歌できる……。そう思った矢先、最後の最後に驚きの結末が待っていました。
ミラーマンの危機をこれまで何度も救ってきたミラーマンの父親が姿を見せ、インベーダーによって荒廃してしまった二次元の世界を復興するようにと京太郎に命じたのです。京太郎の育ての親である御手洗博士もこれに賛成します。京太郎自身の意思は、おかまいなしでした。
御手洗博士の娘・朝子(澤井孝子)とお互いに好意を寄せ合っていた京太郎ですが、彼女に別れを告げて二次元の世界へと去っていくことになります。残された朝子のことを思うと、せつなくなるエンディングでした。
■限られた予算とスケジュールとの戦い
この最終回を撮ったのは、『帰ってきたウルトラマン』の名エピソード第33話「怪獣使いと少年」で知られる東條昭平監督です。また、大映の特撮時代劇『大魔神』三部作(1966年)の特撮監督を務めた黒田義之監督も、『ミラーマン』で多くのエピソードを撮っていました。『帰ってきたウルトラマン』と並行して『ミラーマン』を制作していた円谷プロの、当時のスタッフの層の厚さを感じます。
とはいえ、円谷プロの看板番組『ウルトラマン』の流れをくむ『帰ってきたウルトラマン』に比べると、『ミラーマン』は制作費が限られていたようです。一度倒したはずの怪獣たちが再登場することが何度もあり、ミニチュアの街も急ごしらえ感がありました。
ある種の理不尽さも感じさせた『ミラーマン』の最終回は、たくさんの特撮ドラマを手掛けるスタッフの心情を投影したものではないでしょうか。限られた予算とスケジュールのなか、忙しく働くスタッフたちには家族や恋人とゆっくり過ごす余裕はなかったことでしょう。「この作品を撮り終えれば、ひと息つける」と思っていても、また新しい番組が待っています。彼らは大切な人たちに申し訳ないと思いつつも、自分を必要とする現場があることにやりがいも感じていたのかもしれません。
「朝焼けの光の中に立つ影は、ミラーマン」
徹夜明けの朝、「ミラーマンの唄」を口ずさんだことのあるファンも少なくないのではないでしょうか。ウルトラ兄弟に比べると影に隠れがちな『ミラーマン』ですが、そんな控えめなところも含めて応援したくなる特撮ヒーローだったように思います。
(長野辰次)
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