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検索サイトに出てきた「初任給30万円」…その金額、本当にもらえる?? あの手この手で“誇張”された初任給にご用心

まいどなニュース / 2024年4月3日 12時5分

求人難と社会の賃上げ要請を背景に、大卒初任給の金額が大きく伸び始めています ※画像はイメージです(metamorworks/stock.adobe.com)

「大卒の初任給と言えば、だいたい月額20万前後」とイメージされている方、多いのではないでしょうか。バブル崩壊後から長く大きな変化がなかった大卒初任給が、求人難と社会の賃上げ要請を背景に、大きく伸び始めています。

しかし、賃上げを実施できる業績好調な企業ばかりではありません。少しでも条件を良く見せるため、あの手この手で初任給の見せ方を「工夫」する求人も。就活学生の親世代が知らない「初任給アップの裏で起こっていること」お伝えします。

続々と初任給を引き上げる大手企業

業種を問わず、さまざまな大手企業が大卒をはじめとする新卒初任給を引き上げています。

すき家を運営するゼンショーホールディングスは、大卒の場合、25万円から2万8000円引き上げて、27万8000円とすることを発表しました。それと同時に、正社員を対象に平均12.2%の給与引き上げ(1人平均4万7278円)も実施。2030年まで継続的なベースアップの実施を労働組合と合意しています。

さらに、大卒初任給を30万円台に設定する企業も出始めています。

ゲームソフト・アミューズメント施設運営のカプコンは202年度から新卒社員の初任給(月額基本給)を現行の23.5万円から30万円に引き上げると発表しました。大学院卒から専門学校卒まで一律での大幅なひき上げ額です。24年度新入社員を含む正社員にも、特別一時金に加え平均5%超の昇給を予定しています。

   ◇   ◇

しかし、このような初任給の大幅増に対応できる企業ばかりではありません。特に、知名度の低い中小企業や不人気業界ほど円安や電気代高騰の影響を受けやすく、賃上げをしたくともその原資がないという状況であることも…。

初任給、特に基本給の引き上げは、企業にとって簡単なことではありません。「初任給が高くないと求人情報を見てもらえない」状況下で、なんとか学生にPRしようと、初任給の「誤認」を招くような曖昧な記載をするケースがあります。

初任給を「誤認」しやすい事例を知って、入社後の「こんなはずではなかった」を避けましょう。

「初任給が高くないと求人情報を見てもらえない」を逆手に…

某大手就職ナビサイトの企業検索に「初任給」という項目があります。初任給を以下の5つの金額帯に分けて検索できる機能です。

・18万円未満
・18~20万円未満
・20~25万円未満
・25~30万円未満
・30万円以上

給与は企業選びをするうえで重要な指標ですが、これまでは「新卒初任給の額は、総合職と一般職では違うけれども、同じ総合職なら大手も中小企業もそこまで大きくは変わらない」という前提だったため、あまり参考になる指標ではありませんでした。ところが、先ほど紹介したとおり、大手企業を中心に数万円単位の初任給UPに踏み切る大手企業が多数出てきています。初任給を検索条件にして就職先を探すケースが増えてきました。

ナビサイトでは条件に当てはまらない会社は検索結果に表示されません。しかし、大卒以外に修士卒・博士卒の初任給を設定すればどうでしょう。たとえば修士を25万以上、博士課程の初任給を30万円以上などとすれば、検索結果に表示させることができます。そこで、採用実績や採用予定のない学歴対象者について高い金額を設定し、検索での表示を狙うケースが見られるようになりました。

検索条件結果に表示されたけれども、一般の大卒学生にとっては該当せず、それに気がつかないまま選考に進んでしまう…という可能性があるかもしれません。また、実際にその初任給での採用実績がこれまでにあるのか、確認したいところです。

法律ギリギリの時間外労働手当を含めて記載した初任給

初任給は、「すべての社員に固定で支払われる額の合計」を表記しなければならないというルールがあります。社員によって異なる通勤手当や住宅手当、資格手当などの各種手当や実際にするかわからない残業代見込みなどを加えることはできません。

ただし、みなし残業(固定残業)制度で「最初から全員に一定レベルの残業代を含めた給与を支給する」場合、初任給に反映できることになります。法定上限である月40時間分の残業代を含めて表記すれば、当然初任給は高く見えます。

実際、3月には「初任給40万円」と公表した企業がありましたが、初任給の内訳をみると「80時間分の固定残業代」が含まれており、ネットで議論になりました。

   ◇   ◇

単純に「時給」だけで比較しやすかったアルバイト時代と異なり、正社員の給与形態は会社によって、また同じ会社でも職種や契約形態によって異なり、しかも将来的な全体像が見えにくい仕組みです。「初任給なんてだいたいどの会社も同じ」とイメージしている方、要注意です。

【参考】
 ▽ゼンショーホールディングス・プレスリリース/ゼンショーホールディングス 春季労使交渉妥結 正社員平均 12.2%の給与引き上げと新卒初任給引き上げについて 直近3年間で累計27.2%の賃上げ
▽カプコン・プレスリリース/新卒初任給引き上げのお知らせ

◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。

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