兵庫・斑鳩寺の仏画、真鍮泥で描かれたと判明 国内最古の事例
毎日新聞 / 2024年9月5日 11時15分
兵庫県太子町教委は4日、聖徳太子創建と伝わる古刹・斑鳩(いかるが)寺(太子町鵤(いかるが))が所蔵する仏画「紺紙金泥(こんしきんでい)釈迦三尊十六羅漢像」(国重要文化財)について、金泥ではなく「真鍮泥(しんちゅうでい)」で描かれていたことが科学分析で判明したと発表した。16世紀に奈良・法隆寺から寄贈された仏画で、製作時期は11世紀後半(平安時代)とみられる。金泥の代用品として真鍮泥を使った絵画や写経の中で国内最古の事例という。
京都国立博物館(京都市)と町立歴史資料館の共同研究。金泥は金の粉末を、にかわで溶いたもので金色の文字や絵画を描く際に使われる。銅と亜鉛の合金である真鍮を使っても金色になるが時間経過とともに発色の劣化や紙の傷みが生じる。
同資料館によると、従来、中国伝来の真鍮が国内で使われるようになったのは江戸時代以降と考えられてきたが、近年、金泥とされてきた平安時代の写経が真鍮泥だった事例があることが蛍光エックス線分析で判明。これまで30例以上確認されているという。
仏画は縦約1メートル、横約48センチの5幅構成。調査した同博物館の大原嘉豊研究員によると、衣類のひだの細やかな表現などから製作年代を11世紀後半と推定。2022年の展覧会で借り受けた際、紺紙に傷みがあることから真鍮泥の可能性があると気づいたという。
大原研究員は「真鍮は高価な金の代用品だったと考えられ、11世紀後半の本格的な仏画で使われたことを示す貴重な資料。真鍮がいつ、どのように流通したかを解明する手がかりとなる」としている。
斑鳩寺は1541(天文10)年に焼失した後、復興。寺に残る文献によると、1577(天正5)年に法隆寺から仏画が寄贈された。
11月2日から12月8日まで町立歴史資料館で公開する(5幅の展示替えや休館日あり)。入館無料。問い合わせは同資料館(079・277・5100)。【村元展也】
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