インバータのブレイクスルーがいよいよ実現 [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]
MotorFan / 2018年5月24日 7時20分
ディーゼルエンジンの性能を飛躍的に向上させた「コモンレールシステム」や、夜間に歩行者を検知する「ナイトビュー」など、世界初の製品を多数生み出してきたデンソー。本展示会では、同社が注力して取り組んでいる「環境」と「安心・安全」という2分野に分けて出展していた。 ●TEXT&PHOTO:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
当サイトが注目したのは、環境分野に展示されていた「SiCパワーデバイス」。インバーターなどに活用可能な現在開発中の製品である。
SiCとは日本語にすると炭化珪素のこと。ハイブリッド車や電気自動車の走行用モーターを制御するためのインバータなどに必要とされるパワーデバイスという半導体部品に用いる新材料である。従来使われていた材料(Si:シリコン)に比べて電気の無駄を減らし効率的に使えるため、自動車の燃費や電費が向上する。それにより環境への負荷を低減するわけだ。
その「SiCパワーデバイス」を実装したパワーモジュールとして注目したいのが、「両面直接冷却2in1パワーモジュール」。新たに絶縁セラミクスを内蔵する構造に変更されたことで、従来品と比較して冷却効率が向上し、高出力化が図られている。
ブースでは、パワーデバイスを液冷式の熱交換器で挟み込む構造の従来品だけでなく、「両面直接冷却2in1パワーモジュール」を搭載したカットモデルが展示されていた。コンパクト化が進んだことが、写真でお分かり頂けるだろうか? この「両面直接冷却2in1パワーモジュール」は現在開発中であり、評価を進めているようだ。
もう一つの注目すべき構成部品が「SiC MOSFET」だ。そもそもMOSFETは、電流を流したり止めたりする、いわばスイッチの役割を果たす。今回展示された「SiC MOSFET」では、小さなチップの枚数を増やすのではなく、チップサイズを12mmと大型化することで、流れの効率化を実現している。小さなチップの枚数を増やすことでも効率化そのものは可能だが、電流の流れに偏りが起こることがあり、安全率をとると本来求められるものより多くのチップが必要となり非効率である。また小さなチップを多数搭載すると、制御面でも厳しくなる。そこで開発されたのが、大型の12mmチップである。SiC-MOSFETは、トヨタ自動車、デンソー、豊田中央研究所との3社で共同開発しており、チップサイズは未定だが、2020年の実用化を目指している。
優良自動車部品メーカーとして圧倒的な存在感を放つデンソーだが、その快進撃はまだまだ続きそうだ。
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