【福祉の車窓から 第1回】うちの娘、息をするのを忘れるんです。
MotorFan / 2018年8月22日 11時0分
モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。 ※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。(2016.8.26)
うちの娘、チャイルドシートに座らず、母親に抱っこで移動します。通いのトレーニングがあるので毎週必ず……。ドライバーである私は「傍目からみたら道交法的に難ありなんだよなあ」と思うとおのずと自意識過剰になり、プライバシーガラスもなく車内丸見えの古くさい愛車を恨みながら、交差点を曲がる度に歩行者の厳しい視線を感じてしまう次第。
申し遅れました。はじめまして、古川と申します。生業は自動車雑誌の編集、DTP/WEBレイアウターです。MFを出版する三栄書房から発行された車種別専門誌の編集長歴もあります。夜通し編集して印刷所に原稿を届け、寝袋で昼寝してまた起きて仕事……と、会社に寝泊まりすることもしばしばの生活でありました。しかし現在は9割9分在宅勤務。WEBサイトの記事制作・更新などが生活の糧となっています。40代中盤2児の父、上の息子が成人する時には還暦。「まだまだ働き盛りだろ」そんな声が聞こえてきそうですが、止むに止まれぬ事情というのがあり、そんな生活となりました。
それというのも、時折うっかり呼吸を忘れてしまうという特徴をもった下の娘が生まれたから。加えて出生直後より、彼女は体幹に近い筋肉が弱く、手足の先がかろうじて動かせる程度という基礎疾患を持っています。そしていまでもゴックン(嚥下)が苦手。そんなこんなで絶賛24時間看護です。
そんな娘も6ヶ月の入院期間を経て、めでたく退院してきてから1年あまり。首も据っていません。いまでも食事は4時間おきに粉ミルクを1時間半かけて。点滴と同じポンプを使って、鼻からチューブで胃に直接送ります。嚥下が不得手なので、間違って気管に食べ物が行ってしまうと肺にたまり、誤嚥性肺炎になる可能性があるからです。誤嚥性……ちょっと聞いたことがありますか? 老人の死亡原因でよく出てきます。食事・排便・入浴・痰の吸引、そして移動と、すべてケアが必要。障害者手帳も頂きました。
そうなんです。我が家は小児介護のある家庭なんですが、終わらない老人介護のまっただ中と思っていただくと、イメージがしやすいかもしれません。ただ大きく違うのは、突然やってくること(脳卒中からの麻痺などは似ていますね)。意志の疎通がとれないところからスタートすること。通常の保育ケアもついてくること。短期間で終わる可能性が少ないので、保護者が何かを選ぶときは、先を見据えて選択肢を広く持つ必要があること。そして最初の体重が軽いことなど。
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さてやっと本題。冒頭の「抱っこ乗車」。これもリクライニングするタイプのチャイルドシートを使っても、痰が絡んだり気道が確保できずに酸欠になる娘の症状から、上肢の角度などが療養上適当でないとして、シートへの着座を免除されるということになっています。しかし、それはそれとして自動車業界の末席にいる私としては、それでも万が一の事故の衝撃を考えると、何とかならないかものかと思うところもあり、色々と調べました。そして、娘にも適当なシートがあるコトがわかりました。介護の世界では、装具といいます。実はまだ解決に至っていないものの、カーシートと呼ばれる装具を入手ができることになり、仮装着のフィッティングチェックを待つばかりとなっています。次回はそのお話も。
生々しい話が続きましたが、介護の現場の話を交えつつ、福祉制度と福祉車両の世界のよしなしごとを、引き続きこのページにてレポートしていきたいと思いますので、今後ともよろしくおねがいいたします。ご意見もお待ちしております。
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第42回 国際福祉機器展
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005298/big_571635_201808201608400000001.jpg)
写真は2015年10月に開催された第42回 国際福祉機器展でのカットです。この回はマツダブースに展示されていたボンゴベースの車椅子リフト付きキャンピングカーと、トヨタシエンタのウェルキャブが魅力的に映りました。キャンピングカーやハイブリッド車などのように電源があると、各種アラート付きセンサー、点滴のポンプ、排痰のバキュームなどとともに移動する、寝たきりや、定時のケアが必要な要介護人を連れているとありがたいです。またコンロがあると食事もあたたかいものが作れるほか、煮沸消毒もできる点も好感度の理由。ですが、従来のキャブコンと呼ばれるFRPなどのシェルを載せたキャンピングカーは乗降用のドアが小さくて乗せ降ろしが難しかったため、せっかく車内ユーティリティが充実していながら、障害者にリーチできないという残念なものでした。シエンタは介護する、される人々が必要とする車内での動きが見えている点が、現行法の中で最大限実現されているのが画期的です。具体的な話はまた。
![使う人により必要な装具がバラバラであることも難しくしている部分。でも、使う側が合わせられる部分も意外とあるんですよね。](https://motor-fan.jp/images/articles/10005298/big_571637_201808201608100000001.jpg)
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005298/big_571637_201808201608100000002.jpg)
著者紹介:古川教夫
クルマとバリアフリー研究家。基本は自動車雑誌編集&ライター&DTP/WEBレイアウター。かつてはいわゆる徹夜続きの毎日だったが、現在は娘さんの介護をしながら9割9分の在宅ワーク。『ドレスアップナビ』(https://dressup-navi.net/)のアンカーや、ライフワークであるロータリー関連の執筆活動等を行いながら、介護経験から見る福祉制度と福祉車両の世界をつづる。2017年2月に福祉車輌取扱士の資格を取得。
モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。
※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。
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