乗ってわかった! 新旧メルセデスGクラス走りの違い
MotorFan / 2018年8月22日 11時40分
どこが違うの?と思ってしまうほど似ている新型Gクラスと旧型Gクラス。この違いは、乗ってみなければわからない!ということで新型G550と旧型G350dを乗り比べてみた。果たしてその違いは、見た目以上に大きいようで……。 REPORT●高平高輝(KOUKI Takahira) PHOTO●小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)
唯我独尊のGクラス
新旧2台を並べて見ているから私たちにも区別がつくが、新型Gクラス1台だけをポンと置かれたら、勘違いしてしまうのではないか。それほど新型は先代に似ている。しかしながら、これまでと同じパーツはドアハンドルとスペアタイヤカバー、ヘッドライトウォッシャーのノズル、それにサンバイザーの4点だけだという。
平面ガラスだった先代と同じように見えるウインドウガラスもよくよく見れば微妙にアールがついた曲面ガラスである(リヤゲートガラスだけは平面だという)。Aピラーやルーフの周囲に取り付けられたモールもレインチャンネルの機能はなく、デザインのためらしい。もちろん中身は大きく変更されているが、一事が万事、以前と変わっていないように見せるために、微妙に異なる新しい部品を造るなんて、今時なかなか許されることではない。
キープコンセプトなんて生易しいものではなく、あえて先代の特徴を踏襲するために手を尽くしている。唯我独尊のGクラスだから認められる、こだわりの、そして力業のモデルチェンジと言えるかもしれない。
1979年に登場したGクラスが一般人にも認知されるようになったのは、デビュー10年後にパートタイム式に代えてフルタイムAWDシステムを採用し、5速ATが装備されてからだろう。本物ゆえの唯一無二の個性が根強い人気を得ていることに気づいたメルセデスは、その後パワーアップと豪華装備化を進め、これまでに何度も生産中止の噂が流れたにもかかわらず生き延び、今では本格的高級SUVということになっている。
![外観はキープコンセプトだが、インパネは一気に最新スタイルとなったGクラス。](https://motor-fan.jp/images/articles/10005324/big_569689_201808211741450000001.jpg)
若さゆえの過ちというものは誰でも認めたくないものだが、私たちオヤジの青春時代はとにかく使いこなすのが難しい“プロ用”に憧れたものだ。楽器でもスキーでもゴルフクラブでも、スイートスポットが小さいほう、使いこなすのが難しいほうがエライ、カッコいいと考えていた。その意味でGクラスは完璧だった。あくまでオフロードの機能優先という基本スタンスには昔も今もまったくブレがなく、今時ロック可能なディファレンシャルを3個も備えている市販AWD車なんてまずお目にかかれない。
おかげで世の中の流行り廃りに左右されない孤高の存在に登りつめることになった。その独自性ゆえ一度は乗ってみたい憧れのクルマの代表格、スポーツカー部門でのポルシェ911のようなものだろう。
圧倒的にユニークなGクラスを選べば個性とステイタスを主張することができるし、ランボルギーニやフェラーリよりは“堅気”に見えるのは確かかもしれない。それに変わらないから古臭くならないというメリットもあるが、何度も言っているように元々軍用派生のクロスカントリービークルゆえに、カッコだけ逞しく装った乗用車ベースのSUVとはまるで別物である。
従来モデルの最大の弱点は(もちろん弱点と思わないプロもいる)、高速直進性やステアリングレスポンスといったオンロードでのスタビリティだろう。先代型G350dはそれでも昔とは比べられないほど改善されているものの、普通のクルマに馴染んだ人が初めてGクラスに乗って驚き、後悔するという話は珍しくない。
![先代Gクラスのフロントウインドウが平面なのに対し、新型はわずかに湾曲している。](https://motor-fan.jp/images/articles/10005324/big_569691_201808211744190000001.jpg)
圧倒的に進化したGクラス
![独立サスペンションを採用した新型Gクラスのシャシー](https://motor-fan.jp/images/articles/10005324/big_569694_201808211746340000001.jpg)
それが新型では一気に改良された。何よりもまず直進時にチョロチョロ進路を乱すことがなくなった。と言っても、今回はクローズドコースで試した限りの話だが、リジッドだったフロントサスペンションが4リンクとなり、リサーキュレーティングボール式だったステアリングが現代的な電動ラック&ピニオンに改められた効果は大きい。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005324/big_569695_201808211809160000001.jpg)
本格的クロスカントリービークルにとっては悪路で自由に伸縮し駆動力を確保する大きなホイールトラベルが何より大切であり、オンロードのフラットで快適な乗り心地(そのためのスタビライザー)などは、本来二の次だ。余裕のある地上高のせいで重心高が高いのも当たり前、無論スタビリティ面は不利である。だがこれだけオンロードでSUVとして普及すると割り切るわけにはいかず、様々な手を打ってきたというわけだ。ステアリングのロック・トゥ・ロックは従来型は3回転半も回ったが、新型は他のメルセデスと同じ2.8回転となり、セレブリティのなママにも扱いやすくなった。
四角いフロントガラスを通して、角ばったボンネットとその両端に載るウインカーインジケーターを見る眺めはまったく昔通りだが、12.3インチの巨大なディスプレイを2枚並べたインストゥルメントパネルとジェットエンジンのようなエアアウトレットが並ぶダッシュ周りはまるで最新のEクラスクーペのよう。だが、センターコンソールに設けられたローレンジ・スイッチと相変わらずダッシュ中央に並んだ3個の独立したデフロックスイッチが普通のメルセデスではないことを主張する。初めて乗る人ならまず間違いなくシートから腰を浮かすほど驚く、走り出すとすぐにガシャン!と大きな音を出す自動ロックもあえてそのままである。
![](https://motor-fan.jp/images/articles/10005324/big_569697_201808211811230000001.jpg)
もっとも、Sクラスなどと同じV8ツインターボ(422㎰/610Nm)と9段に増えたATを積む新型G550は、明らかに従来型より静かに滑らかに走る(サイドウィンドウには二重のアコースティックガラスを採用)。今どきの洗練されたSUVとして、もうほとんど言い訳要らずの性能を備えている。
新型Gクラスは当面G550とAMG G63のみ、それもあって先代のG350dは併売されるという。高価なGクラスで本当の悪路に踏み込む人はまずいないはずなので、新型にしておけば間違いない。最新の安全装備などより、伝統的なプロ・ツールとしての手応えが欲しいというマニアックな方は、今のうちにG350dと乗り比べてみてほしい。Gクラスが真に特別であること、そして新型が一気に現代的になったことが分かるはずだ。
SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツG550(新型)
■ボディスペック:全長4817mm 全幅1931mm 全高1969mm ホイールベース 2890mm
■パワートレイン:エンジンタイプ V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量3982cc
最高出力310kW(422㎰)/5250~5500rpm 最大トルク610Nm(62.2㎏m)/2000~4750rpm
■トランスミッション タイプ 9速AT
■シャシー:駆動方式 AWD サスペンション フロント 4リンク サスペンション リヤ リジッド
■ブレーキ:フロント ベンチレーテッドディスク リヤ ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール:フロント 275/55R19 リヤ 275/55R19
■車両本体価格 1562万円
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