第29回メディア対抗ロードスターレース参戦記⑥(最終回)レースは学びの場です
MotorFan / 2018年9月3日 21時55分
モータージャーナリスト塩見智が10年ぶりにレースに挑戦するストーリー。ついに決勝で第2ドライバーとしての走行が始まった! レース復帰の顛末は? REPORT◎塩見智(SHIOMI Satoshi) PHOTO◎市健治(ICHI Kenji)
楽しい時間はすぐ終わる。ピットから「P(ピットインせよ)」のサインが出た。どうやらクルマを壊さず次のドライバーへ渡せそうだ。ホっとした私はやらかした。ピットロードへの白線をまたいでしまったのだ。次のドライバーの走行中に監督がコントロールタワーへ呼び出されたが、厳重注意という寛大な措置をしてもらった。丁寧に走行してもひとつのミスですべて無意味になる恐怖を感じた。
ひとまず私のロードスターレースが終わった。その後3人のドライバーは再び激しくなった雨の中を激しくプッシュし続けた。だがそれは他のチームも同じ。多くのチームが速いドライバーを後半に配置しているため、どんどんレースのレベルが上がる。燃費の不安がなくなったロードスターレースは激しいバトルの場となった。
4人目のドライバーが途中ヘッドランプを消して走行してしまい、このままではペナルティを受けると急遽ピットボードに「ライト!」という表示を出して点灯を促したが、そのときちょうどバトル中だったドライバーはなかなか気づかない。とうとうオフィシャルからオレンジボール(機械的欠陥のある車両に出されるフラッグ)が出されそうに。これを提示されると車両を強制的にピットインさせなくてはならない。本来のタイミングよりも多少早くドライバー交代をした。
ドライバーいわく、パッシングの際、意図せずライトスイッチを消したかもしれないとのこと。レースはいかに事前に入念に準備しても、想定外のことが起こるものだということを知った。
SYE&MotorFan混成チームは12位でフィニッシュした。優勝経験のあるチームからしてみれば、結果に満足というわけではないだろうが、ドライバーもピットクルーも皆やりきった表情をしていた。私自身は決定的な迷惑をかけることなかったことに心底ホッとしていた。あのコーナーはもっと奥まで突っ込めたのではないか、あのケースはビビってウインカーを出して譲る必要はなかったのではないかなどと、振り返ればいくらでも反省点は出てくる。が、その時点でベストを尽くしたという満足感はあった。充実していた。
普段フリーランスとしてひとりで仕事をしていると気楽でよいが、今回のようなチームの一体感を味わうことができない。このリポートもそうだが、チームの一員として自分ができる貢献をすることが心地よかった。レースはくせになる。主催のマツダ、遅い私を受け入れて走らせてくれた他の4人のドライバーとふたつの媒体、そして的確な指示と作業でレースを支えてくれたふたりのメカニックには感謝しかない。
読者の皆様、乱筆の実況リポートにお付き合いいただいてありがとうございます。
(了)
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