写植機誕生物語 〈石井茂吉と森澤信夫〉 第39回 【茂吉と信夫】尽きる蓄財
マイナビニュース / 2024年4月16日 12時0分
フォントを語る上で避けては通れない「写研」と「モリサワ」。両社の共同開発により、写研書体のOpenTypeフォント化が進められています。リリース予定の2024年が、邦文写植機発明100周年にあたることを背景として、写研の創業者・石井茂吉とモリサワの創業者・森澤信夫が歩んできた歴史を、フォントやデザインに造詣の深い雪朱里さんが紐解いていきます。(編集部)
○怒涛の特許申請
写真植字機研究所の工場責任者は信夫だった。邦文写真植字機の実用機製作に向けて、1927年 (昭和2) 年初から取り組みはじめた信夫の機械改良の勢いはすさまじかった。なにしろ1929年 (昭和4) 1月1日には、一気に6件もの特許を出願している。
① 特許第84793号「写真装置」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1929年 (昭和4) 8月23日、特許:1930年 (昭和5) 1月9日
② 特許第84794号「写真装置の『シャッター』」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1929年 (昭和4) 8月9日、特許:1930年 (昭和5) 1月9日
③ 特許第84795号「写真装置の改良」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1929年 (昭和4) 8月30日、特許:1930年 (昭和5) 1月9日
④ 特許第84796号「写真装置暗箱の改良」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1929年 (昭和4) 8月28日、特許:1930年 (昭和5) 1月9日
⑤ 特許第88525号「写真植字機の改良」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1930年 (昭和5 ) 5月19日、特許:1930年 (昭和5) 9月30日
⑥ 特許第88890号「写真印字機の改良」
出願:1929年 (昭和4) 1月1日、公告:1930年 (昭和5) 7月18日、特許:1930年 (昭和5) 10月27日
いずれも特許権者 (発明者) として石井茂吉、森澤信夫の順に名を連ねている。どんな改良を加えたのだろうか。
○ライターをヒントに
試作第2号機での印字テストを経て、印字のムラや文字の並びのガタつきなど、欠点は見えていた。それらをひとつひとつ潰していくように、実用化に向けての改良は加えられた。
まず、数個のレンズをピストルの弾倉のようにターレット式に配列し、このターレットを手で回すことにより、それぞれ倍率の違うレンズを中空管に接続できるようにする「回転レンズ箱」を設けた。レンズをターレット式に配列するアイデアは、試作第1号機ですでに取り入れられていたが、邦文写真植字機を実用化するにはすくなくとも10種類ほどの倍率の異なるレンズが必要と想定されたため、あらためて特許を申請した (① 特許第84793号「写真装置」) 。[注1]
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