大阪公大、全固体ナトリウム電池の量産化に向けた新合成プロセスを開発
マイナビニュース / 2024年4月8日 10時42分
大阪公立大学(大阪公大)は4月5日、ポスト・リチウムイオン電池(LIB)として、より資源量が豊富なナトリウム(Na)を用いる全固体ナトリウムイオン電池(SIB)の量産化に向け、「多硫化Na」(Na2Sx)の不揮発性に着目し、それを原料と反応媒体としての機能を兼ね備える「セルフフラックス」として利用することで、Na含有硫化物の量産性の高い合成プロセスを開発したことを発表した。
また今回のプロセスを用いることで、実用化に必要とされるイオン伝導度の約10倍である10-1Scm-1を超える、世界最高レベルのNaイオン伝導度を有する硫化物固体電解質「Na2.88Sb0.88W0.12S4」や、高い耐還元性を有するガラス電解質「Na3BS3-SiO2ガラス」の合成に成功したことも併せて発表された。
同成果は、大阪公大大学院 工学研究科の奈須滉大学院生(現・北海道大学大学院 理学研究院 助教)、同・音野智哉大学院生、同・本橋宏大助教、同・作田敦准教授、同・林晃敏教授らの研究チームによるもの。詳細は2本の論文として、エネルギーの貯蔵とそのための材料に関する全般を扱う学術誌「Energy Storage Materials」と、米国化学会が刊行する無機化学に関する全般を扱う学術誌「Inorganic Chemistry」に掲載された。
埋蔵量の少ないリチウムに依存しないポストLIBの1つとして期待されるSIBは、すでに中国において電気自動車に搭載されており、実用化の域に達している。しかし、それらは電解質として有機電解液を利用しているため、現行LIBと同様に発火の危険性を抱えている。そこでその危険性を払拭し、なおかつ低コスト化も期待できるとして、全固体SIBの研究が進められている。その実用化に向けては、固体中をNaイオンが高速に移動できる固体電解質材料が必要不可欠だ。
しかし、高いNaイオン伝導度を有する硫化物固体電解質は、出発原料が高温領域において高い蒸気圧を有するため硫黄が欠損しやすく、作製には密閉系の熱処理やメカノケミカル処理が必要であることから、大量合成が困難と考えられていた。また、高いイオン伝導度が期待されるNaを多量に含む硫化物ガラス電解質を作製するためには、さらに急冷操作が必要となり、その点でも大量合成に課題を抱えているのが現状だ。こうした背景から、全固体SIBの社会実装には、量産性の高い硫化物固体電解質の合成プロセスの開発が求められていた。
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