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理科大、安全で高いイオン伝導度を持つ新たな酸化物系固体電解質を開発

マイナビニュース / 2024年4月3日 12時36分

画像提供:マイナビニュース

東京理科大学(理科大)は4月2日、デンソーとの共同研究により、これまでに報告されているどの酸化物固体電解質よりも幅広い温度域において高いリチウム(Li)イオン伝導度を持つパイクロア型の酸化物固体電解質「Li2-xLa(1+x)/3M2O6F(M=Nb,Ta)」を発見したことを発表した。

同成果は、理科大 創域理工学部 先端化学科の藤本憲次郎教授、同・相見晃久講師(現・防衛大学校所属)、デンソーの吉田周平博士らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学学会が刊行する材料に関する化学の全般を扱う学術誌「Chemistry of Materials」に掲載された。

現行の大半の市販リチウムイオン電池(LIB)は有機電解液を使用しており、構造的に発火の危険性を抱えている。そのため、充電速度には安全マージンを取らざるを得ず、電気自動車(EV)では15~20分といった充電時間を要することになっている。

それらを解決できる手段として、さまざまな企業や研究機関などが研究開発を進めているのが、電解質を有機電解液から固体電解質に置き換えた全固体電池だ。全固体電池であれば発火の危険性がなくなり、その結果として現在以上の急速充電も可能となるとされ、EVの充電も5分程度まで短縮できると予想されている。さらにエネルギー密度も高くなるため、1回の充電で走れる距離がエンジン車に近い距離になるとされる。

このように良いことずくめに思える全固体電池だが、課題もある。固体電解質は液体電解質に比べて電極との接触面積が小さくなるため、イオン伝導度が低くなってしまう点だ。そうした中で、室温で12mScm-1という高いイオン伝導度を示したのが硫化物系固体電解質で、EV用途などではその系統を中心に研究が進められてきた。しかし硫化物系固体電解質には、ケースが破損して大気中の水分と反応した場合、有毒な硫化水素を発生させてしまうという、有機電解液の火災と同等のリスクが存在していた。

それに対し、イオン伝導度は硫化物系に及ばないものの、有毒ガスを発生させるリスクがないのが酸化物系固体電解質だ。そのため現在はイオン伝導度を上げようと、ペロブスカイト型やガーネット型など、さまざまな結晶構造を持つ酸化物系固体電解質の研究開発が進められている。

高いイオン伝導度の発現要件として、「イオン伝導パス」と呼ばれる特徴的な構造が重要であることが明らかにされている。パイロクロア型構造の中には、イオン伝導パスが存在している可能性があるが、これまでLiイオン伝導に関する研究はほとんど進められてこなかったとのこと。そこで研究チームは今回、パイロクロア型酸化物を詳しく調べたとする。

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