京産大、水陸両生植物が陸上と水中で葉の形を変える仕組みの一端を解明
マイナビニュース / 2024年4月23日 6時15分
続いて、異形葉性のメカニズムを解明するため、気中(陸上)で育てたR. aquaticaを水没させ、葉の形がどのように変化するのか、経時的な観察が行われた。その結果、水没4日後という早い段階で若い葉の形の変化が見られることが確認された。このように成長中の若い葉の形を針状の水中葉へ素早く変化させることにより、同植物は、水没しても問題なく成長を継続できることが明らかにされた。
さらに異形葉性の仕組みを詳しく知るために、R. aquaticaの植物体全体を水没させる前後で、RNA-seq解析を利用し、今回解読されたゲノム情報を活用して、それぞれどのような遺伝子が働いているのかの比較が行われた。その結果、エチレンに関連する遺伝子群の発現が、水没後では大きく上昇していることがわかったという。
そこで、気中で育てているR. aquaticaへのエチレンの添加を行うことにしたとする。すると、気中にも関わらず、水中葉の形成が促進されたという。また、水没後、葉の表裏の形成に関わる遺伝子である「KAN」や「HD-ZIPIII」などの発現が抑制されていることも突き止められた。葉の発生過程で扁平な形の葉身になるためには、葉がまだ若い時期に表と裏が決定し、その間の部分が成長する必要があることから、エチレンが葉の形を決めるための鍵となっていることが解明された。
エチレンは水に不溶性の気体なので、植物を水没させると逃げ場を失って植物の体内に蓄積される。R. aquaticaでは、この蓄積したエチレンが、KANやHD-ZIPIIIなどの遺伝子発現を抑制することで、葉身の成長が抑制され、葉の形が針のようになることが考えられたとする。水中葉形成のメカニズムが、遺伝子レベルで初めて明らかにされたとした。
今回の研究により、水陸両生植物が水没などの環境変動にどのように応答しているのか、その一端が解明された。近年、地球温暖化に伴う大規模な環境変動が人類を脅かす危機として顕在化している。とりわけ洪水が頻発し、農業生産に甚大な被害を与えることが懸念されている。今後も、水陸両生植物の研究を進展させ、水位の変動が激しい環境への植物の適応機構の詳細を明らかにすることができれば、その成果を応用することで、洪水が多発するような劣悪環境での農業生産性の向上や陸上生態系の保護などに寄与できる可能性があるとしている。
(波留久泉)
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