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東大、26年かけたTAO望遠鏡を擁する天文台が完成し宇宙観測も秒読みに

マイナビニュース / 2024年5月2日 19時18分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)は5月1日、日米欧で運営される電波望遠鏡群であるアルマ望遠鏡の建設地として知られる南米チリのチャナントール山の山頂(標高5640m)に建設された、口径6.5mの大型赤外線望遠鏡(TAO望遠鏡)を擁する「東京大学アタカマ天文台」(TAO:The University of Tokyo Atacama Observatory)のエンクロージャ(望遠鏡など機械設備一式を格納した筐体)を含めた山頂施設が完成したことを発表した。

TAOは、東大大学院 理学系研究科(理学部)の吉井譲名誉教授が代表となり、1998年に立ち上げられた計画(吉井名誉教授は当時、東京大学院 理学系研究科/同科付属天文教育研究センター 教授)。2009年に口径1mのminiTAO望遠鏡が設置されて天文台として活動を開始し、標高世界一の天文台としてギネス記録となった(ちなみに、すばる望遠鏡などがあるハワイ・マウナケア山山頂は4207m、アルマ望遠鏡は約5000m)。

本命の口径6.5mのTAO望遠鏡の本格的な製作は2012年に始まり、山頂の天文台施設の建設に向けた道路の本格的な工事(仮設道路は2006年に完成)が2018年にスタート、2020年に山頂の施設の建設が始まった。そして2023年には観測運用棟が完成、2024年にエンクロージャを含めた山頂施設が完成した。

TAO望遠鏡の最大の武器は、標高5640mという高さ。この高さと地理的な条件が相まって、赤外線での観測の妨げとなる水蒸気がほとんどないという。それにより、他の土地の望遠鏡では不可能な赤外線での鮮明な視界が確保されることとなった。また、気圧が地表の半分ほどしかないという大気の薄さも大きな武器。天文台スタッフにとっては高山病のリスクがある過酷な環境だが、2つの武器により、これまでは軌道上の天文衛星でしか観測が不可能だった0.9~2.5μmの近赤外線波長と、長波長の中間赤外線のうちの40μm弱までがクリアに観測可能となっている。従来の地上望遠鏡でも近赤外線の波長域は観測可能だが、J、H、Kバンドなど、「大気の窓」に分断されてしまっていたとのこと。TAO望遠鏡では、それが連続的に観測可能となるほか、大半の赤外線天文衛星に搭載されている望遠鏡に比べ、圧倒的に大口径の6.5mであり、高解像度の画像が期待されている。

TAO望遠鏡の観測のメインテーマは2つあり、「銀河宇宙の起源」と「惑星物質の起源」。銀河がどのように形成されて進化してきたのかを探るには、初期の銀河を探ることが重要であるが、宇宙膨張により、遠方銀河からの光ほど赤方偏移するため、発した時は可視光線であっても地球に届くまでに赤外線にまで波長が引き伸ばされてしまう。そのため、「初代銀河」のようなビッグバンから数億年後に誕生したと予想される銀河を観測するには、赤外線での観測が必須だという。

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