衛星データ利用のプロたちがALOS-4に熱視線 - CONSEO衛星データ研修ツアー1日目
マイナビニュース / 2024年5月31日 7時2分
●観測回数の増加で利用可能性の拡大が期待されるALOS-4
2024年5月23日、衛星地球観測を推進する産学官による「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主催する鹿児島市・種子島での衛星データ研修ツアーを会員向けに開催した。
約30名の参加者は、衛星データを解析・利用する企業や自治体、衛星ビジネスの関係者など多くが“自分ごと”として地球観測衛星に関わっている。6月末の打ち上げが迫るJAXAの先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」への期待は大きく、ALOS-4プロジェクトの有川善久プロジェクトマネージャ(PM)の講演に全員が聞き入った。今回は同講演を元に、ALOS-4の利用で進む世界を詳説する。
○防災から稲作支援、海上航行の安全にまでALOS-4が活躍
ALOS-4に代表される合成開口レーダ(SAR)衛星は、衛星のアンテナからマイクロ波を発射し、反射した電波をアンテナで受信して地表の様子を観測する衛星だ。カメラのように太陽光の反射で地表を観測する光学地球観測衛星と異なり、夜間でも観測が可能で、また利用するマイクロ波は雲を透過するため、雲の下に隠れた地表を観測できる。夜間や悪天候下でも観測できることから、災害時の緊急観測や定期的な地表の変化の調査などに向いているとされており、ALOSシリーズ衛星の目標は、災害対応と地図の更新、そして地球環境保全が主な柱だ。
この5月、現在運用中の「だいち2号(ALOS-2)」は元気に運用開始から10周年を迎えた。だいちシリーズは日本の大きな災害のたびに観測で力を発揮しており、初代「だいち(ALOS)」は東日本大震災を、ALOS-2は2018年の北海道胆振東部地震や2024年の能登半島地震の状況を観測している。ALOS-2の合成開口レーダ「PALSAR」シリーズを受け継ぎ、より発展させたALOS-4の大きな特徴は、観測幅の大きな拡大だ。ちなみに観測幅とは、南北方向に進行する衛星が一度の観測でとらえることができる東西方向のエリアの広さを指す。
○観測幅の拡大で九州全域を一度に観測可能に
ALOS-4では「観測幅が50kmから200kmに拡大、関東付近では犬吠埼から伊豆半島の西側まで、九州であれば全域を一度に観測できるようになる」(以下、発言はすべて有川PM)とのこと。防災利用においては、この観測幅が大きな力を発揮する。能登半島は東西方向の幅が60km近くまで広がり、1月1日に発生した能登半島地震ではALOS-2の1回の観測ではとらえきれないエリアがあった。関係者を悔しがらせたこの衛星の限界を、ALOS-4ならば超えられる。
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