衛星データ利用のプロたちがALOS-4に熱視線 - CONSEO衛星データ研修ツアー1日目
マイナビニュース / 2024年5月31日 7時2分
観測幅が広がることで、日本全体を観測できる頻度も2週間に1回に増える。「日本全域の観測はこれまで年に4回だったところが、ALOS-4ならば最大で年間20回になる」と有川PMが強調する通り、平時の観測データの蓄積が早まるというメリットもある。
○観測幅の拡大や観測頻度の増加がもたらすメリットとは?
観測データの蓄積があると、緊急時の比較対象が増えることになる。災害時には“地表のどこがどう変わったのか”を調査することで、地すべりや地割れ、火災での消失、津波の浸水範囲や土砂・瓦礫の堆積、インフラの損傷などを明らかにできる。その解析現場では、電波の強弱を画像化したSARの画像は基本的にモノクロであるものの、発災前と発災後の2つの時期の画像を重ね合わせて擬似的に彩色することで、変化があった場所が決まった色で浮かび上がる「2時期カラー合成」という手法で画像を読み解く(判読)する作業が行われている。
画像の判読のためには比較対象となる過去のデータが欠かせないが、比較対象がかなり昔のものであったり、季節がずれていたりするとデータの読み解きの手間が増えてしまうことがある。能登半島地震の場合、JAXAは、1月前半にALOS-2が観測したデータと比較用の過去のデータを合わせて公開するという、きめ細かく素晴らしい対応をとった。ただし、ALOS-2の観測頻度には限界があり、2024年1月1日のデータの比較対象は2022年9月26日・2023年6月6日と、2時期の間に1年以上の時間、または季節のずれがあった。
2つの観測時期の間に森林が伐採されたり土木工事が行われたりすれば、災害の被害と同じように変化として画像に表れることになる。人間が判読する際には、他のデータを重ねた際、災害による変化とそのほかの原因を判別していく作業が必要だ。これがALOS-4で豊富に観測データを溜められるようになれば、変化が小さい発災直前のものと比べたり、1年前の同じ時期のデータと比べて農業などに伴う季節変化を小さくすることができる。日本全域でこうした備えを積んでいくことができるのは、とても心強いことだ。
●有川氏「SNSなどの情報をタスキングする衛星システムが夢」
○精密観測に向けて重要な「干渉SAR」の精度向上
合成開口レーダによる精密な観測として需要が高まっている、「干渉SAR」の精度向上にも意味がある。干渉SARとは、2時期の観測画像を重ねて、電波のずれから地面の沈下・隆起・横ずれといった地表の変化をcmオーダーで精密にとらえる解析の手法だ。その実現には、衛星の通過した軌道が精密にそろった観測データが必要になるため、過去の蓄積が多いほど、組み合わせは作りやすくなる。
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