火星ヘリコプター「インジェニュイティ」の冒険は続く - その最後の任務と未来
マイナビニュース / 2024年5月30日 16時41分
コンピューターにはQualcomm Snapdragon 801とArm Cortexを使い、OSもLinuxベースのものが使われており、こうした既製品、民生品が火星でも使えるかどうかという試験も兼ねている。
目的はあくまで技術実証であり、簡単なカメラを積んでいるだけで、科学観測を行うための機器は積んでいない。
インジェニュイティは2020年7月に、パーサヴィアランスに搭載された状態で地球を飛び立った。そして、2021年2月に火星のイェゼロ・クレーター(Jezero Crater)に到着した。その後、パーサヴィアランスによって飛行に適した場所へと運ばれ、4月3日に分離され、火星の地表に降り立った。
そして日本時間4月19日16時34分(米東部夏時間同日3時34分)、インジェニュイティはローターを勢いよく回して離陸した。高度約10ft(約3m)まで上昇したあと、30秒間にわたって安定したホバリング状態を維持した。その後、正常に降下し、地表に無事着陸した。このときの飛行時間は39.1秒だった。
初飛行の成功後、その成果をたたえ、飛行した一帯の領域は、人類初の動力飛行を成し遂げたライト兄弟にちなみ「ライト兄弟フィールド」と名付けられた。
インジェニュイティはその後も飛行を重ね、4月30日の4回目の飛行では、水平方向に約270m飛行し、さらに5月7日の5回目の飛行では、最高高度10mに達し、さらに水平方向130.84m移動し、離陸地点とは別の場所に着陸することに成功した。
もともとの計画では、インジェニュイティの活動期間は30ソル(31地球日)で、最大5回の試験飛行を実施することになっていた。しかし、試験が順調に進み、機体も正常だったことから、ミッションは延長され、その後も飛行を繰り返した。
最終的に、飛行回数は72回、総飛行時間は2時間あまり、総飛行距離は17kmを数えた。1回の飛行における最大到達高度は24m、飛行距離は708.91m、飛行速度は10m/sを記録した。
●動き続けるインジェニュイティと、火星からのサンプル・リターンの夢
○最後の飛行
最後となった72回目の飛行試験は、2024年1月18日に行われた。
1月6日には71回目の飛行を行っていたが、高度約12mに達したところで異常を検知し、緊急着陸した。NASAによると、砂地の上空を飛行中、航法に使うカメラが、安全な航行に必要な岩などの目印を識別できなかったことで、飛行を中止することになったという。
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