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火星ヘリコプター「インジェニュイティ」の冒険は続く - その最後の任務と未来

マイナビニュース / 2024年5月30日 16時41分

運用チームによると、毎日データを集めても、約20年分も保存できるという。また今後、電気部品が故障してデータ収集が停止したり、太陽電池に塵がたまって電源が切れたりしても、データはインジェニュイティ内に保存され続けるとしている。

運用チームは、「いつか人類が、探査車や別の火星航空機で、あるいは宇宙飛行士が直接、ヴァリノール・ヒルズを訪れたとき、そこには、最後の贈り物として貴重なデータを抱えたインジェニュイティが待っているのです」と語っている。

さらに、インジェニュイティの次を見据えた計画も動き出している。

NASAは現在、欧州宇宙機関(ESA)と共同で、火星から石や砂などのサンプル(試料)を地球に持ち帰る「マーズ・サンプル・リターン(MSR)」ミッションを計画しているが、そこに、2機の火星ヘリコプターを含めることが検討されている。

計画では、まずパーサヴィアランスがサンプルを採取し、専用のチューブに詰め込み、自身の車体内や火星の地表に残す。それを、MSRを使って収集し、小型のロケットで火星から打ち上げ、地球に送り届ける。実施は2030年ごろに予定されている。

カプセルをMSRまで運ぶ役割は、パーサヴィアランスが担うことが第一候補となっている。ただ、2030年ごろというと、すでにパーサヴィアランスが運用できない状態になっている可能性もあるため、バックアップとして「サンプル回収ヘリコプター(Sample Recovery Helicopter)」が搭載されることが計画されている。

サンプル回収ヘリコプターはインジェニュイティより少し大きくなり、質量はインジェニュイティの1.8kgから2.3kgへ、またローターの直径は0.2m大きくなり1.4mになる。また、地表を移動するための車輪も装備している。胴体の下部にはマニピュレーター(ロボット・アーム)を装備し、チューブを捕獲できるようになっている。

もっとも、MSR計画は現在、技術的、また予算的な壁に直面しており、今後どうなるかはまだ予断を許さない。

それでも、これまでは荒唐無稽な夢物語に過ぎなかった、ヘリコプターを使った惑星探査が、現実的なものとして可能性が拓かれた意義は大きい。人類がふたたび火星にヘリコプターを送り込み、インジェニュイティに出会う日は、そして火星以外の天体を航空機が飛ぶ日も、そう遠くないのかもしれない。

○参考文献

・After Three Years on Mars, NASA’s Ingenuity Helicopter Mission Ends
・NASA’s Ingenuity Mars Helicopter Team Says Goodbye…… for Now - NASA
・Flight 72 Status Update - NASA Science
・Sample Recovery Helicopters - NASA Science
・Mars Sample Recovery Helicopter: Rotorcraft to Retrieve the First Samples from the Martian Surface

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)



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