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火星ヘリコプター「インジェニュイティ」の冒険は続く - その最後の任務と未来

マイナビニュース / 2024年5月30日 16時41分

そして、1月18日、ミッション・チームは、インジェニュイティのシステムの状態を確認するため、水平飛行はせず、高度12mまで上昇するだけの、簡単なジャンプ飛行を行うことを決めた。

インジェニュイティは正常に離陸し、予定どおり高度12mに到達したあと、4.5秒間ホバリングを行い、そして秒速約1mで降下を開始した。

しかし、高度約1m上空で、インジェニュイティとパーサヴィアランスとの通信が失われ、飛行状況はわからなくなった。翌日、通信が復旧し、インジェニュイティからのデータが地上にもたらされ、さらに数日後には、ローターが破損していることを示す画像も届いた。運用チームは、なんらかの理由で機体が傾いた状態で地面に衝突し、破損したものとみている。

そして、ふたたび空を飛ぶことは不可能と判断され、1月25日、飛行実証ミッションの終了が宣言された。

インジェニュイティは、「ヴァリノール・ヒルズ(Valinor Hills)」と名付けられた場所にとどまることになった。ヴァリノールとは、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』などに登場する架空の国に由来する。

動き続けるインジェニュイティと、火星からのサンプル・リターンの夢

しかし、インジェニュイティの冒険はまだ終わっていない。じつは、飛行はできなくなったものの、その後もインジェニュイティとの通信は維持されていた。さらに、飛行が終了するよりも前に、新しいソフトウェアが送信されていた。

このソフトには、インジェニュイティは飛行を終えたあとも毎日起動し、フライト・コンピューターを起動させて、太陽電池やバッテリー、電子機器の性能を確認することが指示されている。さらに、カメラで地表の写真を撮影したり、機体の各所に取り付けられているセンサーから温度データを収集したりもする。

運用チームによると、「火星でこうしたデータを長期間収集することで、将来、火星を探査する探査車や航空機の設計に役立つだけでなく、火星の気象パターンや塵の動きに関する長期的な見通しも提供できるようになると考えています」と語る。

なお、前述のようにインジェニュイティは、パーサヴィアランスを介してのみ地球との通信ができる。そして、インジェニュイティが飛行実証ミッションを終えたことで、パーサヴィアランスは今後、通信ができる範囲から離れて探査を行うことになる。そのため、これらのデータは、インジェニュイティのメモリーの中に保管され続けることになる。

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