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長周期彗星を迎え撃つ探査機「Comet Interceptor」とは? 日本が開発する子機に注目!

マイナビニュース / 2024年6月4日 7時30分

Comet Interceptorは、フライバイ観測のミッションである。フライバイなのですれ違いざまに観測を行うことになるが、搭載する2台の子機は、母船よりも彗星に接近。子機B1については、最接近時には850kmの距離まで近づく予定だという。

宇宙的なスケールでは「850km」というのはかなり近いとはいえ、東京からだと札幌まで届くような距離だ。小惑星「2001 CC21」で同じくフライバイ観測を行う予定の小惑星探査機「はやぶさ2」に比べると、遠いように感じる。しかしこれは、彗星が相手という特殊な事情が大きく関係している。

彗星は固体の核の周囲に、揮発したガスやダストからなるコマが存在する。母船と子機はそれぞれダストシールドを搭載するとはいえ、近づきすぎると機体を破壊されるリスクがある。コマがない小惑星ほど接近するわけにはいかないのだ。

子機B1の可視光カメラでは、この核の撮影を狙う。しかし問題となるのは、最大で秒速70kmにもなるという、相対速度の大きさだ。はやぶさ2のフライバイが秒速5kmであることに比べても、その尋常ではない速さが分かる。

子機B1は、最接近の38時間前に、母船から分離する。彗星に近づくと、姿勢を変更。コマから機体を守るために、ダストシールドを前方に向け、さらに太陽電池も飛行機の翼のように水平にして、ダストとの衝突を極力避ける。

このとき、望遠カメラ(NAC)は最接近する方角に向けておいて、彗星が視野内を横切るタイミングで撮影を行う。一瞬で通り過ぎてしまうため、正確なタイミングでシャッターを切る必要があるが、彗星の軌道推定には数100kmレベルの誤差があり、事前にタイミングを計算しておくことはできない。

ここで使うのが、もう1つ搭載している広角カメラ(WAC)である。WACは常に彗星を視野内に入れておいて、オンボードの画像処理で核の位置を検出。そこから、NACで撮影する正確なタイミングを計算する仕組みだ。撮影した画像を母船に送り、そこで子機B1のミッションは完了となる。

子機B1のミッション時間は50時間ほど。母船からの分離後は地上からコマンドを送ることなく、全て自律で観測を行う。

これだけでもかなりチャレンジングなミッションであることが分かるが、柿原氏が指摘するのは「子機ならではの難しさ」だ。

子機というものは、分離前は母船の一部となり、分離後は独立した探査機となる。まず熱設計は、合体時と分離時で太陽光の入射方向が変わるし、それぞれで内部の発熱も違うため、どちらの状態でも成立させるのが難しい。さらに、打ち上げ時には、母船の上に乗っている子機は、母船よりもさらに激しい振動にさらされるという。

出番までの待機時間が長いのも、難しさの1つだろう。子機を長持ちさせるため、待機中はなるべく電源をオフにする反面、半年に1回くらいは電源を入れて、機体の状態を調べる。リアクションホイールは使わない時間が長すぎると固着する心配もあるので、このときに動かしておくということだ。

人類が初めて目にする長周期彗星に接近し、観測するなんてワクワクするミッションはそうない。宇宙ファンは、ぜひこのミッションに注目して欲しい。
(大塚実)



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