映画監督と会社員の「二刀流」 業界の常識に染まらない穐山茉由氏が語る“今どき”クリエイター論
マイナビニュース / 2024年6月10日 6時0分
「『月極オトコトモダチ』を出品した頃、監督・脚本業を仕事としてやっていきたいと思うようになり始めました。勤務している会社も、私が本気であるということに気づいてくれたようで、話し合いの結果、正社員という雇用ではなく、映像の仕事と両立可能な雇用形態を新たに作ってもらい、今に至ります」
●制作者と視聴者とのかい離を生んでいるかもしれない
穐山氏は、草なぎ剛主演の『僕シリーズ』や、『がんばっていきまっしょい』『ブスの瞳に恋してる』といったドラマに、『SMAP×SMAP』などのバラエティ番組を担当した元カンテレの重松圭一プロデューサーが設立した映像制作集団「g」に所属した。それまでは脚本家が参加してきたが、監督の所属は穐山氏が第1号だ。
重松氏は、“二刀流”で活躍する彼女のことを「非常に珍しいと思います」と捉えた上で、「我々が映像制作集団として脚本家だけでなく監督とも一緒にやっていこうと考えたとき、最も意識したのは“多様性”でした。映像というのはそれこそ専門職で、誰よりも映像が好きな方々が作っていますが、それが制作者と視聴者とのかい離を生んでいるかもしれない。ですが、穐山さんのような視点を持った方が映像を作ることで、映像業界の裾野が広がることは絶対あるだろうと思ってマネジメントさせてもらっています」と活躍を期待する。
穐山氏も「映画を作っていると、映像作品が好きな人が周りに多いので、今はちょっと薄れてはいますけど、業界的に“これを観ているのは当たり前だよね”、“映画はやっぱり映画館で観るもの”といった感覚が強かったんです。でも映像業界じゃない人にしてみれば、普段から映画館へ行くよりもサブスクなどで済ませる人が今は増えているし、映画館へ行ったとしても観られるのはメジャー作品ですよね。映像業界で映像作りに没頭していると忘れがちになってしまうその一般の感覚、気付きが会社員をやっていることでありますし、業界の“当たり前”に染まらず、距離を置いて映像作りについて考えることができているんです」と語った。
○映像界の伝統を否定したいわけではない
一人の社員のために新しい雇用形態を作るということは、過去の日本ではなかなかあり得ないことだっただろう。このおかげで穐山氏は、制作側と視聴者側の架け橋に。また業界を俯瞰して見られる映像界の“イーグルアイ”を身に着けた。
それでも、「これまでの映像界の伝統を否定したいわけではないんです」と強調する穐山氏。「昔の映画も大好きですから、そういった環境、慣習があったからこそ、あんな名作が生まれたということも理解しています。ですが現代の映像に対する多様な価値観をふまえつつ、もの作りへの情熱を大事にしながらアプローチしていくのに必要なのは“バランス”なんだと考えています」と認識している。
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