佐野正弘のケータイ業界情報局 第131回 楽天モバイルが手に入れた念願の「プラチナバンド」、過度な期待ができないわけ
マイナビニュース / 2024年7月17日 11時55分
その1つは衛星通信の活用です。楽天モバイルは米AST SpaceMobileの低軌道衛星とスマートフォンを直接通信できるようにするサービスを2026年内に提供することを目指しており、人口やトラフィックが少ないエリアは基地局整備にコストがかからない衛星通信で賄おうとしている様子がうかがえます。
そしてもう1つはKDDIとのローミングです。楽天モバイルはKDDIとのローミング契約を2026年3月まで延長することで、競合とそん色のないエリアカバーを実現していますが、契約が終了すれば再び自社ですべてのエリアを賄う必要に迫られます。
それまでに都市部のエリアの隙間を700MHz帯で埋め、なおかつ衛星通信の実用化を進めて地方のエリアカバーに目途を付ける、というのが楽天モバイルの狙いなのでしょうが、とりわけ衛星通信に関しては実現に向け不確定要素が多く、2026年内にサービス提供を実現できる保証はありません。プラチナバンドを地方に活用しないのであれば、衛星通信の実現まで再びKDDIとのローミング契約を延長することも十分考えられるのではないでしょうか。
そもそも、楽天モバイルは今なお赤字で経営が非常に苦しい状況にあり、仮に700MHz帯の帯域幅が広く、使い勝手のよい帯域だったとしても、積極的にインフラ投資ができる状況にない、というのが正直なところでしょう。現在はKDDIとのローミングがあることから、競合とそん色のないエリア展開ができていますが、ローミング契約終了後のことを考えるとプラチナバンドがあってもなお、楽天モバイルは綱渡りの状況が続くのではないかと筆者は予測します。
佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
(佐野正弘)
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