エンタープライズIT新潮流 第31回 ドリルを買いにきた人が本当に欲しいは何だ? - 心に響く製品の説明とは
マイナビニュース / 2024年7月22日 9時0分
今回は、ITベンダーの方やB to Bビジネスに関わる方に、製品の効果的な説明や強いメッセージの作り方についてヒントをお伝えしたいと思います。筆者が日本企業やグローバル企業の日本法人の製品説明を聞いていると、機能説明が本当に多いです。これでは、お客様の心に響きません。そして、単なる製品屋としてみられ、ビジネスパートナーにはなりません。お客様の目的を把握し、ビジネス課題を認識して、どう解決するか、そして、その結果どのようなビジネス利点とビジネス価値が生まれるかを説明すべきなのです。
○ドリルを買いに来た人が欲しいものは?
マーケティングの世界には、「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」という格言があります。これは、アメリカのマーケティング学者セオドア・レビット氏の著書『マーケティング発想法』(原著は1968年)で紹介されたものです。「私たちが何かを購入する場合、実質的には自分の目的達成のための助っ人を雇っているのだ」というクレイトン・クリステンセン氏の言葉も、これとほぼ同じことをいっています。われわれの製品やソリューションは、雇われているのです。
IT業界のベンダー側にいると、お客様の課題である「穴を空ける」ことよりも、自社の電気ドリルの性能をアピールしているケースが少なくありません。「わが社の製品のモータは○○社のもので、このドリルの硬さ、回転数ときたら他社を凌駕しています!デザインもカッコいいです」といった具合です。多くのITベンダーの方、ドキッとしましたよね。
「当社の製品はこんな機能を持っていて、超速いです」「○○という機能を提供します」という説明していませんか?このように、多くの場合は機能的な説明に終始しているのです。これは日本人にとても多い傾向で、筆者はとても退屈です。Webサイトのページを見てもそんなメッセージになっていることが多いですよね。
ドリルを買いに来た人は「穴を空ける」ことが課題で、電気ドリルは製品やソリューションの1つです。正確に、綺麗に、迅速に穴が空きさえすれば、電気ドリルを買わなくても構わないのです。DIYのお店に行けば有料で穴をあけてもらえるし、電気ドリルはシェアサービスされているかもしれません。これは、自動車業界で起ころうとしていることです。
筆者は自動車が大好きで所有したいのですが、場所の移動だけを目的にすると、レンターカーでも、公共交通機関でも、カーシェアでもなんでもよいのです。MaaS(Mobility as a Service)というやつですね。一歩引いて世界をみれば、いろいろなソリューションがあります。
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