吉川明日論の半導体放談 第311回 GelsingerはIntelを復活に導くか?
マイナビニュース / 2024年8月28日 7時30分
毎年恒例の米TIMES誌「世界で最も影響力のある100の企業」2024年版を読んでいたら、半導体業界からは常日頃私がフォローしているAMD、Intel、NVDIAが選ばれていて、IntelのCEOであるPat Gelsingerへの長めのインタビュー記事が出ていた。かなり長い記事だったが思わず一気に読んでしまった。ついこの前まで「世界最大の半導体企業」として20年間業界に君臨してきたIntelは現在大きな問題を抱えている。かなり弱含みの第2四半期の決算と同時に大規模な人員削減を発表したIntelのCEOの頭に去来するものは何か。
Time誌に掲載されたGelsingerのインタビュー
Gelsingerは80486を始めIntelの全盛期を支えた歴代プロセッサーの設計などに関わり、CTOまで上り詰めた、まさにIntel生え抜きのプロセッサー・エンジニアである。その後、Intelを退社しEMCやVMwareでの経営の経験を積み、3年前IntelにCEOとして舞い戻った。
Gelsingerの復帰には、生産プロセス技術での躓きや複合的な問題を抱えながら漂流し始めた巨大企業Intelを再建するという大きな使命が与えられた。Gelsingerの復帰は、往年のIntelをよく知る業界人たちには非常に好意的に受け入れられ、「Intel復活」への期待は大いに膨らんだ。
CEO就任後間もなくGelsingerが発表した復活計画は「IDM 2.0:IntelをTSMCに伍するファウンドリ会社に育てる」といういかにもIntelらしい大胆なもので、業界は大いに驚かされた。
折しも、半導体サプライチェーンを自国内に取り込むという米政府からの巨額の補助金を受けながら、果敢に研究開発と設備投資に資金をつぎ込むIntelであるが、本業のプロセッサービジネスで競合のAMDとNVIDIAに遅れを取り、今年は通年で赤字となる予測で、今後の成り行きについては株主を含め業界人の多くが懐疑的になっている。確かに、Gelsinger復帰後すでに3年以上経つ現在でもIntelには復活を示す目立った成果が見られない。そんな状況で敢えて受けたTIME誌の独占インタビューでGelsingerが強調するのが、半導体ビジネスの長期戦略性である。「半導体ビジネスは四半期で状況が変化するほど容易なビジネスではない。IDM 2.0は取締役会が承認した5年計画だ。現在Intelはその目標に向かって着実に実績を上げている」と強調するGelsingerであるが、足元の業績はかなり悪化していて大規模な人員削減を含む大きなコストカットを強いられている。
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