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中小企業デットファイナンスの新潮流 第24回 2023年の資金調達環境の概観 創業ファイナンス

マイナビニュース / 2024年9月6日 8時0分

創業時のデットファイナンスに関する統計も2種類紹介します。

政府系金融機関である株式会社日本政策金融公庫が毎年発行しているパンフレット「日本政策金融公庫のご案内」の中で、創業前及び創業後1年以内の企業に対する融資実績が紹介されています。「金額/先数(百万円)」は筆者が計算しました。

コロナ禍後の融資先数の減少傾向に歯止めがかかり直近は増加したものの、まだコロナ禍前の水準(2018年の27,979先)に戻っていません。先数あたりの融資金額も年々減少しており、ついに500万円を下回りました。3年連続で、後述する民間金融機関の創業融資の金額よりも低い状況です。

民間金融機関が信用保証協会を利用して実行した創業融資の件数と金額は、中小企業庁のWebサイトに掲載されています。「保証実績の公表(信用保証協会別の金融機関別、信用保証協会別、金融機関別)」のページに2018年以降の統計がまとめられていますが、ここでは「信用保証協会別の保証実績」を参照します。オリジナルの資料では保証承諾金額が百万円の単位で集計されていますが、他の情報と比較し易くするために1億円未満を切り捨てております。「金額/件数(百万円)」は筆者が計算しました。

創業融資の保証承諾件数も保証承諾金額も、2023年は過去最高の水準でした。件数あたりの承諾金額も増加に転じています。最近はスタートアップの資金調達環境が悪化しているという主旨の報道が多いですが、民間金融機関による創業融資に限れば積極的に資金が提供されており、かつ、エクイティファイナンスと同水準の金額が供給されています。

昨年までは、起業コストの低下の影響を受けて創業融資の金額が減少しているという仮説を唱えていました。信用保証協会を利用した民間金融機関の創業融資の金額が増えていることと、2021年後半から物価高に転じたことから、日本政策金融公庫の創業融資の金額が減っている原因を起業コスト低下に求めることは、説得力が弱くなったと考えています。2024年時点の意見として、金額が大きかった時代の融資の返済状況や貸倒率を織り込んだ結果、日本政策金融公庫は創業融資の金額を減らす方向へと与信が厳しくなったと推論しています。

2023年の記事でも検討した、2020年に日本政策金融公庫の創業融資の先数が突出して大きかった理由についても、あらためて考えます。乱暴に推計しますが、日本政策金融公庫は例年26,000先へ創業融資を実行するポテンシャルがあると仮定した場合、2020年の上乗せ幅は約14,000先となります。民間金融機関の創業融資が2019年も2021年も約27,000件で2020年は約20,000件だったことから、2020年は前後の年と比較して約7,000件少ないです。上乗せ幅14,000先のうち7,000先は、普段であれば民間金融機関へ創業融資を申し込んでいた層が日本政策金融公庫へと申し込んだと見做すことができそうです。残りの7,000先は、コロナ禍の資金繰り支援策を呼び水として発生した特需が由来となっていて、金融緩和を契機として起業の時期を前倒しした層も含まれているとイメージしています。

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