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日産が取り組む「スマート工程」とは? 自動車製造のゲンバは変わるのか

マイナビニュース / 2024年9月2日 11時30分

自動車製造の“きつい”イメージを変える?

スマート工程導入に向けた改革はいろいろあるが、「生産ラインでの肉体的および精神的な負荷の低減」も見逃せない取り組みだ。

通常の生産ラインでは、車体の流れに合わせてさまざまな部品を組み付けていくため、常に体を動かす必要があり、腰への負担が大きかった。そこで日産は、従業員の肉体的負担の低減を図るべく、一部の工程に座ったまま作業できる「エルゴチェア」を導入した。

チェアを導入したエンジンルーム内の組み付け作業では、これまでは1台分で腰曲げ動作が4回、しゃがみ込み動作が1回、部品取りおよび振り返りが3回発生していたのに対し、チェア姿勢では部品取りおよび振り返り1回のみにまで動作を削減できたという。作業に必要な動作は日々の繰り返しであるだけに、この負担減は体調維持にも大きく貢献するだろう。

精神的な負担減では、QRコード読み取り機能などの活用による部品確認のしやすさや作業の単純化などを図っていくとしている。勤務時間、肉体、精神の負荷を減らすことで、働きやすい製造現場を目指していくことこそがスマート工程の取り組みなのだ。

日産の担当者によれば、将来的には、クルマの開発段階から生産性の向上を図るべく、クルマの構成部品を大まかなモジュールに分けることでサブラインの活用を増やし、高効率な自動化を含めた生産ラインの改善も図っていきたいとのことだった。
スマート工程の現状は?

スマート工程の導入が進めば時間的あるいは身体的な制約を持つ人材の活用を進められる。さらには、体力的および精神的に厳しそうなイメージが付きまとう自動車製造現場のイメージを改善させられるかもしれない。

ただ、作業の単純化を突き詰めていけば個々の技能が必要とされる場面が減り、優秀な人材が離れていってしまうという危険性もあるのではないだろうか。この点について日産では、担当の上司によるフォローを強化することにより、個々の希望に合ったキャリアアップもサポートしていくとしている。スマート工程には、仕事への誇りややりがいが持てる職場環境づくりも盛り込まれている。

スマート工程は始まったばかりの取り組みだ。第1弾として2021年度に九州工場に導入しており、2024年度は全国各地の工場でも開始するという。

将来的なモジュール化による生産の効率化を含め、製造現場の大幅な改革には多くの時間と費用が必要となる。今のところ、九州工場の生産ラインで時短勤務を利用しているのは従業員の1%に過ぎないとのことだから、制度の浸透にも時間を要するだろう。

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