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ビジネス茶道・表千家茶道 講師の水上麻由子が聞く 第17回 アスリート陶芸家にして茶人、山田翔太氏が説く「みたて」の大切さ

マイナビニュース / 2024年9月11日 10時0分

「『必ずしもひとつのことを極めなくても良い』という思いはあります。いま、スラッシャー(スラッシュワーカー/複数の肩書や仕事を持つ人)という働き方がありますが、僕も結局それをやってるだけなんですよ。ただ、なにを掛け合わせれば良いか、選び方とチョイスが重要です。僕の場合は、陶芸とお茶とスポーツ、そして“話す”ということを掛け合わせている感じですね」

とはいえ、現在の形になるように狙ってブランディングしてきたわけではないという。「みたて」についても、「自分の作品を見てもらえて嬉しい」「この人はこう見るんだ」ということが面白くて繰り返していたら、いつの間にかそれが講座になっていたそうだ。

さらに山田氏は、ここに自身の根底にある民藝への思いも重ねる。

「もうひとつ話しておくと、僕にとってすべての師匠は、柳宗悦なんですよ。柳は茶道はやってなかったけれども、茶道自体はすごい愛していたんですよね。だからこそ痛烈な批判を言っています。ただ、SNSもないあの時代は強い言葉を使わないと思いが伝わらなかっただろうし、彼自身そういう性質だったと思うのでしょうがないと思います」

だが、山田氏の考えは柳宗悦とは異なるという。

「僕はどちらかというと手を繋いで、茶道の世界とうまくやっていきたいんです。『どうやったら遠州流に人を引き入れられるのか』『外部から盛り上げられるか』っていう感覚でやっています。そこは柳とは違うところです」

おそらく昔は現代のように忙しく毎日を過ごしておらず、長い間お茶のお稽古に向き合えていた。そうして「型」を学びながら何年も過ごしていくうちに、日常の中で美しいものを探して育てるという気付きを得ることができたのだろう。だがいまは「十年やっていくうちにわかる」では若い人に伝わっていかない。だから短いスパンでも物事に集中する時間が必要なのかもしれない。

「柳宗悦は“審美眼”という言葉をよく使っていました。彼は仏教の世界の中にいて、実は僕も2年前に高野山真言宗で得度していて、お坊さんなんですよ。仏教の教えと柳の思想はすごく繋がっているところがあって、やっぱり自分の心がどう映るのか、それを磨いていくと審美眼になる。でも柳の見た美しい世界が審美眼になるわけではなく、一人ひとりそれぞれが美しさを見いだしていくことが審美眼であって、僕自身もそれが伝わるよう言葉を紡いでいきたいなと思っています」

最後に山田氏は、自分で選択することの大切さを語る。

「ビジネスでもなんでも、自分で選択することはすごく大切だと思うんですね。でも、誰かの目を気にして、注意を外に向けた状態で選んだことって、自分の選択ではないんですよ。僕が『みたて』で伝えたいのは、『自分自身の心を内側に向ける』というところなんです。とはいえ、いきなりできるものでありませんよね。だから日々の生活の中で10分でも15分でも内側に自分を向ける時間を作り、それを増やしながら精度を上げていく。そのためにお茶だったり陶芸だったりアートがあると思っています」
(水上麻由子)



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