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吉川明日論の半導体放談 第315回 IPOという大きな夢に前進するCerebras社

マイナビニュース / 2024年10月8日 7時5分

画像提供:マイナビニュース

2019年のHot Chipsで話題をさらったWafer Scale IntegrationのCerebras Systems社がIPO申請を発表した。実現すれば2015年の創立以来、10年弱でのIPOという快挙となる。シリコンバレーで働く者にとってIPOはまさに大きな夢である。
Wafer Scale Integration(WSI)という壮大なアイディア

Cerebras社が開発した「Wafer Scale Engine(WSE)」は、300mmウェハを1チップとして活用し、AIプロセッサを実現しようという壮大な技術である。

私はその発表を見た時には多分発表だけに終わってしまうキワモノ泡沫技術であろうという印象を持ったが、その後も着々と実績を積んで、IPOの段階に来たというのは驚きである。しかも、その製品領域が現在最も注目されているAI半導体分野であることには、シリコンバレーでひと旗揚げようという技術陣の熱い情熱を感じる。

215mm×215mmのシリコンウェハに1.2兆個のトランジスタを集積するという2019年の発表時から3世代の進化を続けて、最新の製品は4兆個のトランジスタを集積するというから、まさにお化けチップである。90万個のAIコアに44GBオンチップ・メモリを搭載したAIサーバーをシリコン上で直接クラスタ接続することでレイテンシを極端に縮め、機械学習のプログラミング効率を飛躍的に高めるという。この製品を使用したスパコンはすでに稼働していて、創薬研究などの活用例も紹介されている。

以前にもご紹介したように、WSEのようにウェハスケールのチップへの機能統合(Wafer Scale Integration:WSI)というアイディアはかなり昔からあって、多くのベンチャーが挑戦したが実際の製品化には至らなかった。その中で記録に残っているものでは、IBM互換機で一世を風靡したAmdahl社を退いた天才技術者兼CEOのジーン・アムダ―ル(1922-2015年)が立ち上げたTrilogy Systems社がある。「汎用コンピュータでIBMに挑戦し続けた男」として知られるアムダールは富士通の出資を受けてAmdahl社を設立し、IBMの互換機で対抗したが、その後IBMの安値攻勢で事業がたちいかなくなり退社した。しかし、アムダールの技術者魂はこれで終わらなかった。ワンチップ・コンピュータ実現という夢を1980年、Trilogy Systems社の立ち上げで実現した。Trilogy Systemsの製品は2.5インチウェハ上にメインフレームを造り込むという大胆なアイディアで製品化にこぎつけたが、歩留り、信頼性、実性能で目標に達せず、結局商用には至らず、5年後に姿を消すことになった。

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