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大人のインフラ紀行 第6回 冬季閉鎖前の閑散とした「黒部ダム」、人を近づけなかった厳しき山の片鱗を垣間見た

マイナビニュース / 2024年11月19日 11時0分

画像提供:マイナビニュース

インフラツーリズムとは、公共施設である巨大構造物のダイナミックな景観を楽しんだり、通常では入れない建物の内部や工場、工事風景を見学したりして、非日常を味わう小さな旅の一種である。

いつもの散歩からちょっと足を伸ばすだけで、誰もが楽しめるインフラツーリズムを実地体験し、その素晴らしさを共有することを目的とする本コラム。今回のターゲットは日本を代表する有名なダムのひとつ、富山県の黒部ダムだ。

○行くだけで命がけだった、山奥の中の山奥で大工事をする厳しさ

“日本一のダム”と言い切っても、異論は出ないであろう黒部ダム。社会科の教科書に必ず出てくる有名インフラなので、授業のときに居眠りさえしていなければ、誰もが耳にしたことはあるはずだ。

黒部ダムに行くと決めてから、アマプラで1967年公開『黒部の太陽』(熊井啓・監督 日活)を観た。

1964年に毎日新聞で連載後、出版された同名小説(『黒部の太陽』木本正次・著 毎日新聞社)を原作とする映画だ。黒部ダムの事業主体である関西電力が全面協力しているため、ダム建設時に現場で起きた諸事実が生々しく描かれている。

コンクリートの壁をガンガン築き、渓谷の川を堰(せ)き止め、壮大なダムとダム湖をもりもり造成していく様を描いた物語なのかと思えば、さにあらず。

黒部ダムの建設予定地、北アルプスの立山連峰と後立山連峰に挟まれた黒部峡谷は、人里離れた山深いところにある。それもそんじょそこらの山奥ではなく、行くだけで命がけの大山奥だ。

「黒部に怪我はなし」という古諺(こげん)どおり、道中でもし転んだり滑ったりしたらただの怪我では済まない場所。ダム工事の初期段階では、そんな山奥にある現場まで徒歩や馬で資材を運んでいたので、日常的に歩荷の転落死亡事故が発生した(映画の冒頭にそうしたシーンもある)。

そこでダム予定地へ安全・効率的ににアプローチするため、まずは北アルプスをぶち抜くトンネルを掘ることになる。『黒部の太陽』は、全長5.4キロメートルにおよぶそのトンネルの掘削工事を描いた映画なのだ。

関西電力の現場責任者・北川を演じるのが三船敏郎。難関である第三工区のリーダー・岩岡を演じるのは石原裕次郎。昭和の2大スターがそろい踏みした映画としても知られている。

掘削工事は当初順調だったものの、フォッサマグナの大破砕帯(硬い岩盤が細かく崩れ、大量の水を含む地層)にぶつかり、水温4度の冷水が毎分660リットルも噴き出す悲惨な現場になっていく。

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