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写植機誕生物語 〈石井茂吉と森澤信夫〉 第55回 【茂吉と信夫】発明博覧会――写植機、一般社会へ

マイナビニュース / 2024年12月3日 12時0分

一、大賞:技術上の進歩および実施上の効果卓越せるもの
二、進歩賞:技術上の進歩優秀なるもの
  有功賞:実施上の効果優秀なるもの
三、褒状:技術上の進歩または実施上の効果優良なるもの [注8]

出品された発明品は、機械工業、化学、製作、農林、意匠、商標の6つの部門に分けられ、それぞれのなかで分掌を定めて審査された。邦文写真植字機は「第1部 機械工業」のうち、「第10分掌 印刷機」のなかで審査され、進歩賞に選ばれた (主任審査官は廣瀬基)。

受賞の理由は、報告書にこのように記されている。

〈本出品は従来の自働植字機及「モノタイプ」「リノタイプ (筆者注:ライノタイプ)」より更に一歩を進めたるものにして前後左右に移動し得る透明文字盤上の文字を下方の電燈によりて照明し之を十個の拡大度を異にする「レンズ」によりて任意の大きさに暗箱内の「フイルム」に影写し斯くして文字盤上の文字を次々に「フイルム」に写真植字するものにして各部に亙りて巧妙なる工夫を施したるものにして将来印刷界に一大転換期を与ふるものと謂ふべし〉[注9]

なお、機械工業部門では、出品人数250、出品点数797のうち、大賞20点、進歩賞37点、有功賞32点、褒状35点で、計124点、出品の約半数が授賞された。[注10]

発明博覧会の52日間の会期中は天候にめぐまれ、雨が降ったのはわずか6日だった。東京市内の電車や市営バスは「発明博覧会行き」を運行し、ふくびきや工場労働者の無料入場デーなども実施した結果、会期を通しての入場者数は33万人あまり、1日平均約6,300人、最高記録約2万8,000人におよぶ盛況ぶりとなった。[注11]

連日多くのひとが訪れた写真植字機研究所ブースだったが、記録を見ると、その場で受注にまでは至らなかったようだ。[注12] しかしじつは、ここで写真植字機に出会って惚れこみ、のちに愛用者になるアオイ書房の志茂太郎も来場していた。

茂吉と信夫の写真植字機は、この発明博覧会で、晴れて一般社会へのお目見えを果たしたのだった。[注13]

(つづく)

出版社募集
本連載の書籍化に興味をお持ちいただける出版社の方がいらっしゃいましたら、メールにてご連絡ください。どうぞよろしくお願いいたします。
雪 朱里 yukiakari.contact@gmail.com

[注1] 発明博覧会 編『発明博覧会報告』第4回、第四回発明博覧会、1932 p.1 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1225555/1/29 (参照 2024年10月2日)

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