1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

「歩く」を楽しむ社会に、動力不要で人の歩きを支援する機構を名工大などが開発

マイナビニュース / 2024年12月25日 7時30分

歩くという動作と密接なかかわりを持つ上下運動

歩行に上下運動が伴うというのは、実際に歩いてみると腰の高さが一定ではないために直感的に理解できる動きであるといえるだろう。では、この上下運動を歩行の支援に使えないか? そう考えた佐野教授らの研究チームは、上下運動で生じる重りが揺れる運動を本人に伝達する仕組みとして、稲穂の如くしなやかな円弧状のピアノ線を介して脚と連動させた「稲穂型歩行支援機」を考案したという。

具体的には、腰の後方に背中からある程度の距離を空けて重り(慣性体)を搭載するハードポイントを用意。腰部にはそのハードポイントを止めるアタッチメント部がベルトやズボンに差し込む形で用意され、かつ膝部のバンドとたわんだ状態のピアノ線を結ぶ役割を担っている。この腰部のアタッチメントと重りのハードポイント部の間は体形に応じて伸び縮みが可能なスライド機構でつながっており、ヨー軸/ロール軸の回転機構を装備しているほか、アタッチメント部にピッチ軸が備えられている。

この構造により、歩き始めると重りが上下に揺れ(前に進む際に沈んだ位置から浮き上がる位置に移動)、その振動に併せてピアノ線がたわみ、元に戻ろうとする動的な動きが生み出されることとなる。ちなみに重りは数百gほどが適当で、歩いていると重りの負荷を感じない。試作機ではモバイルバッテリーがちょうどよい重さとして採用されたという(重さで言えば小型のペットボトルとかでも良い。あくまで重さが重要であり、電気を動力に活用するといったことではない点に注意が必要である)。

この動的な動きは、主体者である歩行者の動きに沿ったもので、稲穂型歩行支援機自体はその歩行者との相互作用に受動的に介在するだけのものであり、かつ平地ではその揺れもほとんど感じない程度のわずかなものだという(坂道や階段の下りでは大きくなる)。重りの上下運動は一定の歩行リズムを刻むための手助けとなり、テンポよく歩けるようになる。さらに、歩きやすい状況、いわゆる足が上がって軽やかな足取りという表現を自然と実現できるようになる。しかも、坂道や階段の上り下りも楽である。実際に何人かが参加する形でテストしてもらった際にも、「アシスト力を強くしてくれ」という要望はほぼ出なかったという。佐野教授の見立てとしては「装置が背中から離れた状態で、そこに意識が向くかというと、どちらかというと自分の歩容(歩いている様子)に意識が向いて、装置が揺れていることすら忘れるような気がしている」という。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください