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「歩く」を楽しむ社会に、動力不要で人の歩きを支援する機構を名工大などが開発

マイナビニュース / 2024年12月25日 7時30分

佐野教授の考えとしては、まずはこの新原理を多くの人に体験してもらいたいという思いが強いという。そのため、商品化以前に、そういった興味を持ってくれる人が増えてくれることを目指すとのことで、興味をもってくれた人からの問い合わせなどに真摯に対応していきたいという。そうした体験を通して、大規模な体験会の開催や製品化を支援する企業・団体との連携など、新たなつながりの誕生への期待を述べる。

また、鈴木氏は「歩行支援機のメーカーの人に試着してもらった際、何も装着感を感じないという返事をもらった。開発する側としては、本当に装用感のないものを目指してきたので、その感想はまさに狙った通りのものでうれしいもの。現代の人は眼鏡をかけるが、装着していても違和感を感じることは少ない。そうした身に着けていても、着けていないくらいの存在になれれば良い」と、あくまで人に寄り添う自然な存在となることを目指したいとする。

人工知能(AI)の活用が社会に変革をもたらすと言われるようになってきた現在だが、そうした中にあって、人間の感覚に作用し歩行を楽しめる稲穂型歩行支援機は、歩くという行為が失われない限り、人間が人間であるための重要な機構となる可能性が考えられるという。また、そういった発想から、歩行支援以外のデバイスも生み出される可能性もある。佐野教授は、「機械的な作用が加わることで、人間のポテンシャルが変わってくる。こうした仕組みが分かってくると、人間中心のものづくりが今後、もっと求められる時代になっていく可能性もある。これまでは機械単体で性能がすごいという話が多かったが、人間に寄り添って使われる機械が重要だという概念が広がっていく。そうした概念は必ずしもハイテクが必要というわけではない。稲穂型歩行支援機もローテクだが、そこに腰の複雑な動きを許容する自由度の高さを持たせることで、人と機械のハーモニーが生み出され、歩くことを楽しむという価値を生み出すことにつながることが期待できるようになった」と、今回発見された原理、そしてそれを活用することで生み出された技術が、人間らしく生きるという新しい側面の価値にもつながっていく可能性を強調する。

機械が人間の持つポテンシャルを自然に引き出すことを可能とした稲穂型歩行支援機。歩行という行為は人間の根源的な行動の1つでもあり、いつまでも健康でありたいという願いを体現する存在でもあるだろう。装着していることを意識せずに、そうした歩行を支援し、歩くことを楽しくする新たな原理に基づく技術であり、佐野教授もまだまだ進化の余地があるとする。まだ稲穂型歩行支援機は、佐野教授や鈴木氏が使うものを含め、数台程度の試作段階に留まっているというが、そうした原理の探求に併せて、どのように進化していくのか、今後の動きが注目される。
(小林行雄)



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