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『全領域異常解決室』“神”ドラマを成立させた構成の妙 納得をもたせる脚本と映像センスで応えた演出陣

マイナビニュース / 2024年12月19日 6時0分

“辻褄合わせの巧者”といえど、外側の骨組みだけを巧みに構築できるのではなく、内側の“人情”も巧みなのが黒岩氏だ。例えば、トリックと不可解が逆転した第3話は、“タイムホール”というSF要素を持ち出しながら、研究者の愛の物語も壮大かつ繊細に描き出し、大きなフィクションの中に丁寧な心情描写を潜ませる、巧妙な人間ドラマであった。その人間ドラマの巧みさは、後の神の登場後も健在で、共感できるはずがない神々のキャラクターをも視聴者に納得をもって魅せる“神ドラマ”として表現してみせたのだ。

●“何かある”と思わせる含みに秀逸な選曲…演出陣の力量
黒岩氏の巧みな脚本を見事に映像化させた演出陣も忘れてはならない。特に今作は、映像的な“チープさ”を決して見せてはならない。なぜなら、チープさが見えた瞬間にこのドラマは絵空事となり、はたまた最終回における戦闘シーンが子どもだましになってしまうからだ。近年のVFXの進化も大きいが、“誰も見たことのないドラマ”を全く見劣りしない映像演出によって、誰も見たことのない世界観を成立させた。

特に個性が光ったのは、チーフ演出の石川淳一監督(第1話・5話・最終話を担当)と、松山博昭監督(第3話・6話・9話)だろう。石川監督はこの難しいテーマを内包する作品の導入部をキャッチーにして気軽に視聴できる雰囲気を構築しながら、今後“何かある”と思わせる含みをしっかりと封じ込めた。また最終回のVFXを用いた呪術バトルも、ともすれば一気にチープになってしまいそうだが、見事な映像センスで大人もワクワクできる世界を演出してくれた。

一方、松山監督は選曲とその“入り”が秀逸だった。一見今作にはマッチしないのではと思わせたエンディングテーマのバラードソング「エンドレス」(TOMOO)は、特に第3話での壮大な愛の結末に流れるタイミングが絶妙で、様々な要素を持つおもちゃ箱のような本作に美しい“リボン”をかけてくれた。

演出以外においても、名作に名サントラあり。地上波連ドラ初担当だったという劇伴の小西遼氏のサウンドメイクも忘れてはならない。特に印象的だったのは、不穏な電子音から突然力強いオーケストレーションへなだれ込む「Nobody expected」だ。このトラックは衝撃的な展開が続く今作でしかマッチしないのではないかと思うほどインパクト絶大で、まさに“誰も予期していなかった”(=Nobody expected)見事な劇伴だった。
○“訳が分からない”のに面白いすごさ

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