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患者の待ち時間を削減、従業員の働き方も改善 DXで理想に近づいた調剤薬局の挑戦

マイナビニュース / 2024年12月24日 17時0分

「iPadは、毎年5人ほど入社する新入社員のほとんどが使ったことがあり、iPhoneを持っている人も多くいます。最近の大学生はPagesなどのアプリを使った経験があるため、改めて教える必要がほとんどなく、システムの教育コストはきわめて低く抑えています。現場の困りごとは、抽象的でも良いので可能な限り吸い上げて、会話をし、言語化し、仕様を決めてアプリに実装して運用するという流れで、組織で分担しながら作っています」(渡邉氏)
顧客サービスや在庫問題はアプリ化して解決

調剤薬局の業務のDX化が進む一方で、薬局を利用する人を対象にしたアプリの制作にも着手しました。なごみ薬局で独自に開発したアプリ「メディカルペイ」です。

処方箋を写真に撮って送ると調剤が始まり、アプリ上で電話会議によって説明が受けられる仕組みです。調剤した薬は電子お薬手帳にも記録されます。これによって、長時間化する調剤時間を待たずに、他の用事を済ませられるようになり、顧客の時間を無駄にしない仕組みを作り上げました。

それ以外にも、デッドストックとなっている薬品を売買するアプリも作りました。薬の写真を撮るだけで、機械学習から薬の種類を判別し、個数を入れれば薬局間売買に出すことができ、収益問題の改善にもつながっていました。

DXで得られたものは「時間」、これをどう活かすか

渡邊氏は、DXに関する基本的な考え方について、次のように指摘しています。

「基本的に、デジタル技術は“距離”と“時間”で生産性を劇的に改善するもの、ととらえています。距離は、店舗間、店舗内、店舗と患者である人の3つ。これを一瞬にして縮められれば、生産性が劇的に上がります。遠隔で薬について説明したり、スキャンしたデータをスタッフ内、あるいは患者との間でやり取りしたり。

もう一つの時間は、考える時間、計算する時間、探す時間を可能な限り少なくしています。徹底的にiPadに情報を集約し、業務をアプリ化し、患者や薬の情報をすぐに呼び出せるデータを構築しました。それができると、入力の提案ができるようになり、さらに時間が縮まります」(渡邊氏)

デジタル化によって、煩雑・困難な作業を自動化でき、時間的な余力が十分に確保され、ほとんど残業がなくなり、結果として人件費に余裕が出ているといいます。

その空いた時間こそが重要だといいます。なごみ薬局では、患者とのコミュニケーションに十分な時間を確保でき、渡邊氏が目指す「患者に継続的に寄り添い、心から元気にする」というゴールに向けて取り組めるようになったのです。

渡邊氏のDXによる生産性改善の考え方は大いに共感でき、調剤薬局以外の業種・業態にも応用できる汎用性の高い取り組み方だと感じました。

著者 : 松村太郎 まつむらたろう 1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程終了後、ジャーナリストとして独立。2011年からはアメリカ・カリフォルニア州バークレーに移住し、サンフランシスコ・シリコンバレーのテクノロジーとライフスタイルを取材。2020年より、iU 情報経営イノベーション専門職大学専任教員。 この著者の記事一覧はこちら
(松村太郎)



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