藤井聡太、佐々木勇気という存在 竜王戦第5局を考察する
マイナビニュース / 2025年1月10日 11時30分
「基本的にはいまもかわいがっていただいていますが、勇気さんが私に対して先輩後輩ではなく同期の間柄のような接し方になってきているのを感じます。対等な存在として認めてくださっているようでうれしい半面、あまりに理不尽で納得がいかない場合もあります(笑)」。
○完全無欠の天下人
―岡部さんは佐々木八段に多大な影響を受けて今日に至っているわけですけれど、では藤井竜王はいかがでしょうか。
「奨励会は東西で分かれていましたし、三段リーグも被っていないんですが、藤井竜王は詰将棋の解答選手権で12歳のとき優勝するなど、その天才ぶりはつとに有名でした。藤井さんが三段リーグ1期抜けを遂げた同じ期に、二段だった私も昇段が間に合えば参加できる状況だったんですが「これを勝てば」という一番を何度か逃したのはとても残念でした。私のリーグ参加はそれから半年後になったわけですが、四段昇段にはそれから11期、5年半を要しました。二段と三段のニアミスを最後に、藤井竜王にはすごい勢いで差をつけられてしまいました」。
―藤井竜王はどういう存在でしたか。
「藤井竜王とは直接的な接点がないままに、自分はずっとメディアを通じてその偉大な足跡に接するだけでした。私がまだ10代の頃は年下の活躍を見るのは嫌だなという気持ちが少しはあったんですけど、藤井竜王は見る見るうちに遠いところにいってしまい、そういう感情はあっという間に消滅しました。最初はこちらが三段リーグを戦っているときに藤井竜王は連戦連勝で軽い痛みも感じましたが、リーグ戦でもまれすぎて疲弊し腐ってくると「もう、いい」と(笑)。いつの間にか視界にも入らなくなりました」。
―岡部さんが四段になり、再び同じ舞台で競い合う対象として意識できるようになってからはどうでしょう。藤井竜王と指したことはまだないんでしたっけ?
「公式戦ではまだなんですけど今年、ABEMAトーナメントのチーム戦で、ついに一戦交える機会に恵まれました」。
―仲間の応援を背に燃えたでしょう!
「ええ、派手な演出の中で高揚感に包まれて、全身全霊をかけて挑みました。ところがこれ以上ないほどの気合を入れたにもかかわらず、あえなくボコボコにされ、全駒にされてしまったんです。いくら相手が最強でも、この惨敗はさすがに悔しくて、結構へこみましたね。このままではいけないなと心底思いました」。
―岡部さんはそれで発奮し、日々努力する姿勢につながったという筋書ですか。
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