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すばる望遠鏡の新たな超広視野多天体分光器「PFS」が遂に2月から本格稼働へ

マイナビニュース / 2025年1月14日 18時50分

すばる望遠鏡の視野は満月を横に3個並べた広さに近く、ほかの大型望遠鏡と比べても群を抜いている。世界中の視野が広い望遠鏡でも、満月が丸ごとは収まりきらない程度の視野しかなく、すばる望遠鏡とは比較にならないという。そしてこれだけ視野が広いと、同じ種類の天体が複数収まりやすいため、一度にまとめての観測もそれだけしやすくなる。

これまでのサーベイ観測プロジェクトの中で、史上最も重要な成果を出したとされるSDSSでは、広い視野を持つものの主鏡は小さい望遠鏡が用いられた。それに対し、もし人間に例えると120もの極めて高い視力を持つすばる望遠鏡でサーベイ観測を行うと、さらに大きな観測成果が得られることが期待される。実際、すでにHSCを使った戦略枠観測プログラム「HSC-SSP」が実施されており、これまでに膨大な撮像データが3回に分けて公開されている(最終データとなる4回目のリリースは時期未定)。

なお望遠鏡による観測では、単に届いた可視光を結像するだけでは不十分とされる。もちろん、光学的に撮像された美しい宇宙の姿も重要だが、届いた光をプリズムに通して光の波長ごとに分析する分光こそが極めて重要であり、星や銀河の化学組成、星の種類や年齢など、分光観測ではじめてわかることがいくつもあるのだ。中でも、天体の遠ざかる速度さえわかれば、すばる望遠鏡であれば極めて遠方の天体でも三次元情報が得られることになることから、すばる望遠鏡の分光性能の向上が求められ、それがPFSによって実現された。

PFSは複数の機器で構成され、主焦点装置には約2400本もの光ファイバが配されている。これにより、すばる望遠鏡の超広視野において、これまでの20倍となる約2400天体の分光観測を同時に行うことが可能だ。また光ファイバの隙間については、光ファイバそれぞれをピエゾ素子を用いてある程度動かすことができ(頭髪の半分ほど、20~30μmの精度)、観測したい天体の方向に向けることが可能だという(光ファイバ位置制御装置は「コブラ」と呼ばれる)。この仕組みにより、基本的に観測できない死角はない構造となっているとのこと。なお、主焦点装置の焦点面全体を一気に撮像して光ファイバの現在位置を正確に測定させるメトロロジカメラシステムを用いて、この光ファイバの配置を素速く行えるようにしてあるといい、またPFSが取得できる電磁波(光)の波長域は、可視光線全域と近赤外線の一部(380~1260nm)だ。

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